コラムVol.10:後からなんとでも問題。

後からミックスでなんとか問題。。

いきなりですがレコーディング時に「Mixでなんとでもなるんで」っていうエンジニアさんは基本的に要注意ですよ〜(苦笑)冗談の様で増えてきたな〜と思うことがしばしば。

少なからずこんなブログ書いてるくらいエンジニア兼クリエイターなので「Mixでなんとでもならん」のを重々理解してます。

後で直せない音質も問題ですが、こういう適当な音質でのRECもかなりの問題です。

同じ様なレベルで、いろんなところで「コンプはプラグインで」って言葉を何度も耳にするのですが、コンプをかけて録音することとプラグインでコンプをかけることに大きな違いがあることが結構浸透していないってことですよね。じゃあってのが今回のテーマです。

さて、この大きな違いをざっくり2個にわけるとこの2つかな〜。

  1. 音質
  2. 意味

まあ①の「ハードウェアが付けてるくれる味がカッコいいのよ〜」ってのは誰でも思いつくので、特に書くことはないです(笑)

なので、今回のテーマは②の「意味」です。

デジタルになった後は変えられないってのが重要なポイント!

DAWに録音するってことはアナログ(A)がデジタル(D)に変更される訳で、もっとざっくり言えばデータになってるので、根本的にはもう変えられないんですよね。

ここをもう少し現実的な書き方していきます。

例えば「アケル」って言葉を母音と子音に分けると、a,k,e,r,uになるのですが

これのkの部分をうまく発音できてなくて、ke(ケ)がはっきりしない音(便宜上、クェにします。)で録音されると、プラグインコンプはそのクェで録れた音(データ)しか触れないんですよね。

つまり、プラグインで調節できるのはそのクェの音のまま音量が変わるだけです。ハードだと子音を強調することで滑舌を改善させることができます。

インターフェイスの前=録音より前のアナログの部分でいかに音質を整えることが音質やテイクの向上につながります。

レコーディングにおける利点① 録り音の音量の精度があがります。

コンプ本来のお仕事って音量調整なんですが、まさに今回のポイントはそれなんです。

平歌とサビの音量差がかなりある場合、どちらかの音量に合わせたマイクプリのゲインでどっちも行けるってことはほぼないんですよね。トラックものとかだといい意味で音量が差が少ないので行けちゃうのですが、バンドものとかはそう簡単にいかないものです。

個人的には、よほど下手な人じゃない限りテイクを分けるのってあんまり好きじゃなくて、気持ちや空気感がつながらないんですよ。どうしてもじゃない限りある程度のまとまりは一気に録音したいはです。

サビの声量に合わせると平歌の録音レベルは低くなるし、逆にすると声を張ったときにクリップしやすくなって困ったことがあると思います。

で、これを程よい中間点を作ってくれるのがハードウェアコンプです。コンプの説明によくある「大きい音を抑えて、小さい音を大きくしてくれる」ってやつです。ピッキングが甘いアコギや弦の音量差が大きい多言ベースとかも有効です。

ハードウェアコンプは各社からでており、それぞれのさじ加減や味のつき方は過去のコンプの記事でも話してるのでチェックしてみてください。

レコーディングにおける利点② モニターの精度=テイクの精度

先ほどの音量に関しては、録音されているデータもそうなのですが、プレイヤーに送ってるモニターの音量にも大いに影響がでます。ここは皆さんが思ってるより重要で、皆様の録音時の基本スタンスを大いに変えてしまうかもしれません(笑)

かなり大袈裟ですが、これ本当にテイクへの影響が大きく、楽曲の精度がかなり変わります。

「後でミックスで〜するので、なるべくピュアに録ります」

冒頭にも書いたこの手の言葉が出ると、正直ゲンナリします。ダークakeruが発動しかけるくらい嫌いなセリフというかスタンスです。

最近のエンジニアっぽい人たちや若いクリエイターがよく言ってるのを見かけるのですが、これって結構変なことばですよね?

ギタリストを例にあげるとわかりやすいのかもしれません。

歪みやコンプ感など、弾いている(=聴いている)音をによって、プレイって全然変わりません?現時点で現行のプラグインやデジタルアンプシュミレーターがいくら音がよくなっても、手や耳の感触(イメージの話ね)がやっぱり違うんですよね。じゃなきゃ、UniversalAudioのOXがお仕事道具としてこんなに流行らないでしょ。あれはプリとパワーまで本物なので、手の感触が本物なんですよね。OXが出てからスタジオでの弾き直しがほとんどなくなってかなりの時短アイテムです。

リアンプあるじゃんって思うかもしれないですが、結構あからさまにダイナミクスが死んじゃって、1個のアンプとかだとダメなのよ。壁みたいな音像の歪みとかなら大丈夫なんだけど、シングルコイルでうまい人とかはまあ残念な感じになります。

個人的にはSIGNALFORM ORGANIZERのリアンプの音聞いたときに「これこれ〜」ってなりました。DIの部分と分けて販売してほしいな〜と常々思っております。

僕はギタリスト出身なので、人様のレコーディングでも本チャンテイクになることを想定した音とプレイでしか録音しません。逆から言えば、そこ(モニターバック)に拘らないとプレイヤーの本気のテイクを引き出せないと思ってます。

人間って想像以上に優秀でして、聞こえている音や感触を感じ取りなりながら微調整してるわけで、それを「ノる」っていう感覚だと思います。純粋にいい音だと楽しいでしょ(笑)で、プレーに確実に出るんです。

ドラマーでも帰ってくる音量で叩く音量を意識的(無意識的にも)変えてると思います。

仮にモニターでスネアの音が大きかったら軽く抑えてしまう、タムの返しが低いならいつも以上に強く叩いしまいます。

いくらでも例をあげれますが、これをボーカルなどに置き換えてみると長々と何が言いたいか伝わるかと思います。ボーカルの返しに聞こえづらい部分などがあると、そこが気になって、テイクの質がベストより下がる可能性は多々あります。喉にも悪いですし。

まとめ 

まとめると録音時には完成に近い音でモニターを返すことがプレイヤーの能力を最大に引き出し、それをするためにはADの前でハードウェアを使うしかないってことに自ずとなっちゃうんですよね。

もちろん、ここを理解した上でなら近しいことをプラグインでも出来ると思います。もっと言い換えれば必要なことを全部やった上で、手を抜けるとこというかテクノロジーや道具に手伝ってもらうってのを忘れられちゃダメよね。最初で気を抜くと、時間かけても超えられない壁がでちゃうんだよね。

2件のコメント

プリアンプについて調べていたらたどり着きました。大変参考になる情報が多くありがとうございます。
質問なのですが”DAWに録音するってことはアナログ(A)がデジタル(D)に変更される訳で、もっとざっくり言えばデータになってるので、根本的にはもう変えられないんですよね。”とのことですが、UADのUNISONもDSPなのでこの部分の問題は解消できないのでしょうか?

こんにちは。

コメントありがとうございます。

デジタル(D)として「記録(録音)された後」は修正不可ですが、DAWで「記録(録音)される前」にDSPで修正を加えているので、この意味では目的は達成していると思います。
インタフェースの前にデジタルのミキサーやアウトボートを通してるのと同じですよね。それが、内蔵されてるんだからすごい時代になったなと。

UNISONは、「アナログ」→「プラグイン」→「DAW」のプラグインの部分の専用DSPで高負荷(=高音質)を高速で処理しているだけなので、デジタル(D)の世界ですが、文字面とおり「高音質のプラグイン」を「高速で処理している」ので、音はアナログっぽいです。

ここからは個人的な感想なのですが、UNISONをはじめモデリング系の音はかなり似てるけどまだまだ別物として捉えてます。周波数的に似てても、感触や録れている音の面積や立体感などは再現できてはいないと。
特に感じるのは音の立ち上がりですかね。こればっかりは全然違うかなと。勉強して英語を喋れる様になった人とネィティブの違いくらい違います。一瞬も思考時間がなく反射できる感じ。わかりずらいですかね?

もちろん、アナログ(A)の部分で頑張れば、UNISONの音ももっと化けますし、UNISONしかない環境でも本チャンは録れます。例えば、音のエッジなんて、弦の新品度合いやピックの当て方、ピックアップ、そもそもの竿の種類とかの方が圧倒的に音がかわりますしね。

将来的にUNISONにもダイナミクス系出たり、同じレーテンシーのまま2個以上同時に選べるとかになると時代は変わるかもしれないですよね!まだまだ将来性が楽しみです。

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akeru
いつの間にやら業界歴20年越えのクリエイターが表じゃ書けないDAW関連レビューやMixテクニックなど書いていきます。 キャリアの中で身につけた経験を元に誰でも独学でプロレベルでミックスやアレンジができる様になれるよ!って記事を心がけてます。 最初は友人のバンドのお手伝いで始めたレコーディングから、アレンジ力が評価されプロデューサーという仕事に到達。その後、様々なバンドやシンガーさんの作曲からレコーディング、ミックスまでをまとめてうける用になって早20年近く。激しめのバンドものからR&B、HipHopを幅広く受けてます。 以前はアウトボードマニアでしたが、いつの間にやらIn The Boxの極みを目指してます。つまり「ミックスに関してはプラグインでもいけるよ」ってのが最近のテーマです。