MIXテクニック基本編COMP②:まずは仕組みを理解して正しく使い分ける

コンプの方式と使い方は世の中にいくらでも出ているのでさらっとだけ触れます。最近は合わせ技的な機材も増えてきてるのですが、基本は変わらないので軽く理解してるだけでかなりの時短になると思います。

①OPT(オプト)・コンプ

アタックもリリーズもかなり遅い。良い意味でアバウト(ふんわり自然にかかる)。アタックを潰さずにその後の音の膨らみや音量感が安定するので、VocalやBASSなどのモノラル楽器を「滑らか」かつ「太くする」のに向いています。言うならメロディーやベースラインの様な線に向いてると思います。いくら早い設定にしても打楽器の様な早い音は捕まえられないのであまり選ばないってことに繋がります。

★Universall Audio LA-2A、Tube-tech CL-1B、AVALON DESIGN AD2022、IGS ONE LAとか。

まあこれらは真空管の恩恵もでかいけどね。真空管の倍音も入りながら滑らかかつ中域が分厚くなったりますのでので、やはりセンターに配置しそうな音に使ってることが多い。

プラグインでは大体 LA-2Aを元にしてるのがほとんどかな。

②VCAコンプ

・電圧でコントロールされているのでパキっとかかります。とにかく反応が早いので打楽器の様な一瞬でピークが来る音を捕まえたりすることが得意。Snarとかにコンプを掛けてもどうしてもメーターを貫いてくる場合は、VCA系のコンプの出番。それを利用して、Releaseを早めにすることで音のエッジを立てるのにも使えます。点を掴む感じかな。コンプ感があまり出て欲しくないトラックには慣れないうちは使わない方が無難。良くも悪くもコンプって感じがでる。

★DBX系、SSL系、API系、Vertigoとか

とにかくアタックが早くできるので、そのトラック自体の音量の上限を作る時とか使います。後、リズムトラックので音圧を整えたり、音が詰まる感じをうまく逃げれる様になると面(点と面の面ね)系の音とかもコントロールできます。独特のクリーンブースト感とかもあって、コンプレッションは掛かるか罹らないかくらいで、アウトプットレベル等で音量自体の調整とかもしてます。

SSLのバスコンプが世の中的に人気でいろんなメーカーからソフトもハードも出ていて、皆さんにも身近な感じだと思います。個人的な基本設定を書いておくので、ここからスタートしてみてください。

  • Ratio 1:4
  • Attack 10~30 30の方が簡単です。
  • Release Auto Auto?って思うかもしれないですが入力信号に合わせて自動で切り替わるので、早すぎも短すぎにもならず自分の意図で設定を詰めたい時がくるまで Autoで大丈夫です。
  • Threshold GRが-4dbくらいになる様に
  • Makeup Gain 4db戻す感じ。 ここはトラックのレベルメーターをみて、バイパスとオンが同じメーター位置になる様に設定してください。

これでバスコンプのあまり音を変えずに中低域の安定と、パッ木としたワイド感、ハイファイ目なレンジ感を感じられると思います。これで音の変がわかりづらい場合はモニター環境を見直してもいいかもしれません。それくらいわかりやすくない変化がSSL系の肝だと思います。

またそのモデルにDry/Wet(内部パラレル)があるなら、これでもかってくらいにかかる設定にして、Dry100から徐々にWETを混ぜてみてください。パラレルがないなら、同じトラックを複製したりプリセンドで別トラックに送り、そちらに思いっきり(破壊的に)かけて一度ボリュームを下げきって徐々にあげていくと同じことができます。後者の場合、トラックに2個分の音量が後段のバスなりマスターにかかるので、そこのレベルを注意してください。

この結果、Dryの前面に張り付いた音の後ろに、コンプでつぶれて歪んだトラックが後ろにさがるので、すぐに洋楽の様な立体的に奥行きのあるどでかいリズムトラックとかを作れます。潰れた音が歪感や音圧を足してくれるのに、元の音が綺麗にのこってるのでかなりおすすめのテクニックです。

③FETコンプ

Attackは早いが、Releaseリリーズやや遅いタイプです。このReleaseがポイントで、VCAほどハキハキしないのでVocalなどにも使いやすいですし(VCAは良くも悪くもコンプっぽさが強いです)、音の余韻だけ強調したりする使い方もあります。また、FET(真空管の音を狙った回路)はギターエフェクトのオーバードライブなどにも用いられる回路なので、機種によって結構歪み方が違います。コンプの代表格である1176などは、この歪感が音楽的に素晴らしいので良く使われているのではないかなとも。設定しだいでは何でも使える。個人的にはいわゆるBlack(Rev.E)が好きで、Silverは昔からピンとこない。後、AEは持っかい欲しいな。ディストレッサーにハマってる頃に手放しちゃったんだよね〜。

★いわゆる1176系、WesAudio Beta76Shinya’s Studio 1U76 とか 76って言葉が大体つくよね。

まあ、みんながよく使うモデルよね。これでもかってくらいインスパイア製品が出てます。

これも意外と知られてないお作法的なコツがありますして、よくインプット10時にアウトプット14時といった言葉が出てきますが、これをもう少し掘り下げるとこんな感じです。

この位置でレシオ1/4、Attack、Release 5(ここは諸説あり、俺は後述のAttack最遅、Release最速) で、GRが-3dbくらいに触れるくらいが全段からの入力レベルが適正です。つまり、この設定で全然振れなければ入力レベルとして素材の音が小さく、もっと大きく触れてる場合は波形自体の音量がデカすぎるってことでもあります。

なので、1176系をレベルチェッカーの様に使って素材自体がもつ音量感を調整してみるのが、76系コンプを使いこなすのコツだと思います。

ここをクリアしてる状態で、Attack最遅、Release最速が個人的に基本設定です。Ratioに関しては正直1:4か1:8です。この機種に関しては圧縮率うんぬんより1:8の方が低音が出るので、それくらいのイメージでいいかなと。

④真空管コンプ

コンプ的な音の掛かり方は比較的弱く優しく柔らかい感じです。全ての音が滑らかにくっつき合う様な自然ながらも若干のコンプ感にオーディオアンプの様な温かみが特徴。名前の通り回路が真空管なので、以前に書いたように(プロでも使えるMIXテクニックEQ編Vol.4:倍音を理解して意識する )上が伸びるのも特徴です。

温かみのある音色なのでピアノや2mixなど、レンジが広く音をあまり変えずにマジックを掛けたいときに掛けることが多い。個人的なテクニックを一つ書いておくと、TOPに入るスネアとキックの音だけ捕まえるようにすると真空管の柔らかハイ伸びも合わさって金物がいい感じなるのでお試しあれ。

★Fairchild 660、Fairchild 670, MANLEY Variable Mu Limiter Compressor

基本優しく受け止めてくれる分しっとりとし感じが出やすいので、音圧ドーンとかモダンあパッキリ感が欲しい場合は別方式か合わせ技的な方式がいいかなと思います。

⑤ダイオード系コンプ

あまり聞き馴染みがないかもしれないですが、実は大御所さんです。

Neve先生が作るコンプの方式は大体これです。

★Neve 2254とか33609、最近だとRND 5254Chandler ZENER LIMITERとか。

個人的に二つのイメージがあって、一つ目がかなり豊かな低音が付加されるのどんなに暴れた音が入ってもびくともしない安定感があります。リズムトラックでもベースのバスでもこの効果が欲しい時はかなり有効な選択肢です。方式の問題よりも設計上トランスを3回くらい通るので、こういった効果が出ているってなんかで読んだことがあります。

二つ目のイメージは前述の真空管系コンプの倍音が付加されない感じになりまして、真空管コンプで緩くなったりするのが嫌な場合はダイオード系を選ぶのもおすすめです。

たしか、こっちの方がダイオード方式の本来の設計に近買ったと思うのですが、FF/FB(ここは割愛します)の話でもあるので、それのどっちかだけの製品だったり、RNDの様に切り替えスイッチがあったりします。

個人的にはこのRupert Neveの5254がかなりなんでも対応できるので大好きです。

まとめ

結構な長文になってきましたが、KickやSnarの様な打撃音にOPTコンプを使っても動作するまでに音が終わってしまうのでコンプレッサーとしてはあまりいい感じに掛からないし(通した時のサチュレート感が好き的ないわゆる音に味をつける話しとは一旦分けます。)、逆にVocalなどにVCAとかのハキハキコンプを使うと、コンプが掛かった感が強く出て不自然なので、あまり向いてるとは言えないかな。あくまで基本的な話しで、倍音倍音してないほうが合うトラックもいくらでもあるので、その辺はデジタルコンプの出番よね。WAVESのCシリーズとかFabfilterのPro-C2とかみたいな数学な感じ。

後は実験あるのみ

若干面倒くさいんですが、同じトラックを複数複製して持っているコンプを同じ設定で何パターンか聴き比べてみると、コンプだけではなく倍音調整にもいつの間にか敏感になってるはず。

まとめると、それぞれのトラックに合った方式のコンプを選ぶことがコンプの使い方云々の前のコツなのかな。名前とか雑なイメージよりもどういう効果になるかを先に知ってから使うと欲しい結果に近づきやすいから、染みん無だけどそのプラグインのマニュアル等をちゃんと読んで見ることをお薦めします。自分の事を中級者以上だと思ってる人ほど、この辺って雑なのよね、日常もそうだけど知ったかぶりが一番誰も得しない。

もちろん同じ方式の中でも更に機種によって動作の遅い早い、歪みやすい歪にくいはあるので、各方式ごとに代表的なモデルの音の変わり方を身につけてから、使い分けるとそれぞれのコンプの適材適所的な個性が見えてきます。

ここまですると初めて設計者の意図が見えてくるワケで、なんとなくでしかコンプを使えて無い人は、その意図と違う使い方か個々の機種の適切な設定になってないからなのかだと思う次第です。

自然と手が伸びるコンプとリミッターをさらっと。

WAVESだとCLA-2A,3A,76,Ren Comp,Ren Vox,C1,SSL buscomp,L1(雑さがかっこい),Puig660,670

すげーぐっるっとしたらWAVESかIKでもう良いやって感じにこの辺のデジタル系があればもはや何もいらないです。

FabfilterのPro-c,Pro-MB、Sonnox DynamicsとLimiter、後各種ディエッサー系かな。

別にプラグインコレクターでもないので(もちろんそういう時期もありましたが)、滲むor滲まない、歪むor歪まない、早いor早くないがポイントで、音に対してやりたいアプローチしやすいモデルを把握すると一気に作業の精度が上がると思います。



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akeru
いつの間にやら業界歴20年越えのクリエイターが表じゃ書けないDAW関連レビューやMixテクニックなど書いていきます。 キャリアの中で身につけた経験を元に誰でも独学でプロレベルでミックスやアレンジができる様になれるよ!って記事を心がけてます。 最初は友人のバンドのお手伝いで始めたレコーディングから、アレンジ力が評価されプロデューサーという仕事に到達。その後、様々なバンドやシンガーさんの作曲からレコーディング、ミックスまでをまとめてうける用になって早20年近く。激しめのバンドものからR&B、HipHopを幅広く受けてます。 以前はアウトボードマニアでしたが、いつの間にやらIn The Boxの極みを目指してます。つまり「ミックスに関してはプラグインでもいけるよ」ってのが最近のテーマです。