慣れてきた頃こそEQの目的を再確認!大まかに2つ。
いろんなプラグインをなんとなく使ってた人が必要に合わせて自分でコントロールできる様になるEQシリーズの⑥です。
前回の「即戦力のEQテクニック⑤:サビでボーカルが抜けない理由はこれ!倍音の整理編」でも軽く書いてたのですが、今回はもう少しだけ掘り進んでいきます。
①音を作る
音の好みは千差万別だし正解も無いのが音楽なので、言葉が変ですが音作りに関してのゴールは各々にお任せします。
意外と忘れられがちのEQの基本を一つだけ言うとしたら元々のトラックに無い周波数はいくらブーストしても上がらない。元音の状態が大事=つまり録り音ありきです。録音が上手いデーターはプラグイン等の反応もよくなります。
EQが効かないときはプラグインなりが悪いんじゃなくて、録音された音にその帯域が無いか薄いってことで、録る時にしっかり音を作るってのはこういうとこにつながってきます。
後でちゃんとやるからとかで適当にやると、いざって時に同じフレーズとかノリとかでなくて四苦八苦するので、やるべきときにちゃんとやって忘れる方がいいです。
生音系のソフトシンセは既にかなり整えてあるから、ブーストよりは②の周波数の整理が主になると思います。前にも書きましたがそれ自体が単体でいい音に聴こえる様にフルフルに音が鳴っているので、そこをどう他のトラックとの棲み分けるかが本当に手間。
後、元音の修正依頼が出来ない場合もありますよね?クリップしてるとかの事故系は無視して、EQでなんとか出来るかもなレベル。そういうときは自分の耳だけを信じてやろう!
画面上とんでも無い形になってるかもしれないけどそれでOK!
目で見てると見た目で調整しちゃうからね。例え15dbブーストとかになってても大丈夫です。元音のその帯域がそこまでブーストしないと欲しい様に聴こえレベルでしか音がなかったてことです。
こういう時は自然とSSL や APIのEQの様なヴィンテージモデリング系の方がブーストが嫌味じゃないので自然と手が伸びます。
DAW純正のEQよりも元々そうだったんじゃないかな?って思うほど自然ブーストできる(or カットできる)EQが良いイコライザーの特徴だと思います。
ここはハードウェアのEQのほうがさらに自然な感じになりやすいので、すごく高くなくてもいいからそれなりのアウトボードEQはあるといいです。
②周波数の整理
こっちが今回の本題で、タイトルにもある「時間軸での周波数の整理のやり方」について進めていきます。
ギターやシンセがカッコいいバースがあるとして、そこに歌が入るとギターが被って歌が抜け聴こえずらい。じゃあ、被る方のコード楽器に歌と被っている帯域をカットしようってのが普通。
でも、この普通のEQ処理だと、歌がないタイミングもずっとその帯域がカットされてる訳で、せっかくのバンド隊の見せ所もボーカルに気を使ってる感じになります。
勝手にこれを「一世代前のEQ」とします。
プロでもスカスカだなって人のEQはここ止まり。海外のMIXとの差の1つがこれかなって思う。時間軸の使い方がのっぺりしてる様に聴こえるので、楽曲の中でメリハリが少ないです。
サイドチェイン&マルチバンドコンプが大活躍!
サイドチェインの仕組みと効果的な使い方を覚えよう!
サイドチェインって、EDMでベースや上モノをブワブワさせるものなイメージが強いけど、そっちが応用ワザで今からの説明が従来の使い方だったりします。
普通のインサートだと、そのトラックの音に対してコンプレッサーが掛かりますが、サイドチェインの場合は、別のトラックからの信号でコンプレッサーを反応させることが出来ます。
さきほどの例を使うと、まずVOに被るトラック(もしくは、それらをまとめたBUS)にコンプをインサートします。
次に前にいて欲しいトラック(ここで言うと歌のトラックね)からサイドチェインの信号を先程のコンプにSENDします。
DAWによってやり方は違いますが、こうするとVOがあるときにだけオケの方にコンプが掛かって音量が下がる訳ね。逆を言えば、歌がないときはコンプがかからないから、つまりオケはそのままの音量でいても以前より邪魔に聞こえなくなります。
イントロなどはオケが主役→VOが入ったらオケが少し引き下がる→歌が止まったらオケが出てくるみたいに、プロミュージシャンがLiveでやってるみたいな駆け引きが自動で出来るから、時間軸で主役(聴こえてて欲しい音が)が変わっていき、楽曲にメリハリが出てきます。
オケをまとめたBUSとVOのトラックで説明しましたが、VOとEGのBUSなりと被りの関係がある同士は特に効果的です。
これはKICKとBASSの関係にはかなり有効で、KICKからBASSへのサイドチェインをすると、同じタイミングで鳴った時の低音の暴れを逃がせるから、BASSの方にKICKとの住み分けのEQが要らなくなり、KICKが鳴ってない時のBASSの音量が稼げるから安定した低音感を保てる様になります。
邦楽を聞いてるとたまに低音のキープが下手だな(無駄にでかいか、必要値より小さいか)〜って思うことがあります。まあ主に聴くのがリズムか歌かのお国柄の違いでもあるんだけど、ベースってハーモニーの最低音をつかさどるから、そこがちゃんとしてないとピッチが悪く聴こえます。ベースラインの音が安定的に聞こえる作品はいい仕事がされてるなと、エンジニアさんをチェックしたくなります。
ボーカルとベースのピッチに関しては注意深くチェックしてみてください。ベースが安定して聴こえてるってのが、楽曲の印象を決める要素として大きいです。(詳しくはこちらから「実際のMixの流れ編 Vol.7:Bass編②ベースが占める音域と整理」)
サイドチェインに使うのコンプ正直何でも良いんだけど、いろいろ試した感じ個人的にお薦めはWAVESのRenaissance Compressorかな。なんだかんで、これが個人的に一番掛かり方が分かりやすいです。
アタックやリリースは普通のコンプと同じく、音のかかり方や戻り方に関わってるので、楽曲が疾走系なら短め、グルーブ系ならゆっくり目など音を聞きながら実験してみて下さい。
ちなみにGRの目安は-2~3dbでOKです。こんだけのリダクションでもかなり効果があります。ある音のタイミングで狙った音を凹ましたいので、普通のコンプと違ってメイクアップゲインを戻さないのもポイントです。
EQ感覚で使えるマルチバンドコンプの仕組みと効果的な使い方を覚えよう!
マルチバンドコンプというのは、普通のコンプが全ての周波数に掛かるのに対して、イコライザーの様に帯域を分けてコンプを掛けることが出来ます。
普通のコンプで、低音を抑えようとすると高域も一緒に潰れてしまいますが、マルチバンドの場合、抑えたい低音にだけ掛かる様に設定することが出来ます。
先ほどのサイドチェインの応用でこのインサートをマルチバンドコンプにすると、音量だけじゃなくてねらった周波数だけ時間軸で逃げれるれ様になるので、さらに狙ってタイミングの狙った周波数のみにアプローチが出来ます。
いろいろ難しそうな感じがしますが、実は皆さんは既にこの原理を使ってたりします。
「VOの歯切音を抑えるプラグインって何ですか?」と質問した、経験者ならすぐに「ディエッサー」ってなりますよね?
まさにこれがサイドチェインコンプです。ディエッサーはプラグイン内部にあるEQで、もろもろの作業を内部完結してるので、別トラックからの信号がなくても同じ様な効果が出せる訳です。
ディエッサーは別にボーカル専用のプラグインではないので、ベースのある音程だけ膨らむ音域にだけ狙ってコンプ処理ができるなど、シングルポイントのマルチバンドコンブとして、いろんなシチュエーションで使えます。
一瞬だけ別の補足を入れて置くと、ボーカル等のリバーブのトラックはリバーブの前にディエッサー入れておくと、嫌な反射音が入りにくくなります。歯切音が響くのって嫌でしょ(笑)
マルチバンドはどんどん進化していて、つい最近10バンドのマルチバンドコンプも発表されてました。個人的には視認性の高さからFabfilterのPro-MBやWAVESのC4がお薦めです。
サビで入ってくるストリングスの声にかぶる帯域だけが邪魔なときとか、イントロで弾いてるリード音がサビでも鳴らしたいときに、どっちも目立ってほしいから歌の切れ目切れ目で聞こえる様にしたいとか、アイディア次第ではいろんな効果を狙えます。
「ちょっと難しそうに見えるけど実は簡単だから試して見て」というよりは、
「ミックスが上手くなりたいなら習得必須!」
と言いたいテクニックです。
何のどこがどれに干渉してるかを聞き取れる様に慣れば、自ずとやり方は見えてくるし、アレンジや録音のタイミングでちゃんと避けれるようになってくるので、トータルでのクォリティアップに繋がります。
自然に使いこなせる様になると「俺、MIXうまくなったかも」って思うとおもいます(笑)
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