上物=装飾品と捉えて、外見を彩り方を考えてみる
前回まででリズム、ベース、ボーカルと来たわけだけど、この3つの要素だけで結構聴けるレベルの曲やミックスじゃないとダメだと思う。そこから先は、そのジャンルや曲を彩る為の装飾にあたりもちろん重要ですが、人気が出た曲ほどオケもコード進行もシンプルだったりします。
上物=装飾品と捉えて、外見(服装かな?)で考えてみると、ちょっと毒舌になるけど、服装が地味な子がアクセサリーとかサングラスだけ高いの付けてるとか、ダサさが増すじゃん。ちょっとズレは好みの問題だけど、そういう事じゃなくてそもそもの素材やジャンルを無視した過剰な装飾品の足し算は、結局マイナスを生んでます。
数年前になかなかしんどい案件がありまして、その時に送られて来たデータがどんなだったかというと、ギターが1人なのに、アコギが二本(ストロークとリード) 、エレキが四本(バッキングが二本、リードが二本)あって、それぞれの打点が全く噛み合ってなくて、アコギとエレキのストロークすらあってないレベルでした。
更にこのバンドは上手いキーボードの人がいて、既にピアノとオルガンが程よく入ってるから、更にズレが目立つわけってしまったんですね。つまり、人の音を聞いてないどころか自分の別テイクも聞いてないってことで、この案件は中域の飽和の解消のためにバンドのアンサンブル直しから始まりました。
かなり極端な例でしたが、何を言いたいかと言うとコード楽器が過剰なアレンジって本当に多いです。中域が隙間がなく、音で埋めてあり余白がないアレンジって結局どの音も表現しきれないよね。ちなみに手数多いとは別の話しです。ひとつひとつの楽器の音って、アレンジを構成する楽器が少ないほど大きく出来ます。
少し掘り下げると、両サイドにギターをフルでPANを振ってる状態で、センター目なリズム隊とと振り切ったPANのギターとの音の間がなんか寂しないなって時は違うシンセ音とかで埋めるのではなく、リズム隊の音量をもう少し稼ぐなり、ボーカルのアレンジに使う方が結果いいことが多いです。無理に埋めなくても、そこにはReverbなりの空間の音はあります。
「音色が多い方がアレンジがうまい」逆を言えば「隙間が怖い」っていう意識でいると、かなりの確率で落ちやすい落とし穴だったりします。
以前も書いたんですけど、ミックスの前のアレンジとレコーディングがミックスのクオリティのほとんど占めてると思います。あえて書くなら、アレンジ5割、レコーディング3割、ミックスで出来ることなんて所詮2割程度 だと思います。それくらいの気持ちの配分って事ね。
そのセクションはどの音が主役を決めていくのがコツ!
さて、上物の処理に入ろう。前置きが相変わらず長くてすいません。
今までの三要素(リズム、ベース、ボーカル)以外に一番重要なパートを決めよう。トラック系ならシンセとかエレピとか、バラードならピアノやストリングス、バンドものならギターとかだよね。言い換えると比較的にずっと鳴っている音だね。
何トラックも上物があってもとりあえず優先順位を決めます。パートって個別のトラックじゃくて、ギターのバッキングとか、ピアノ、シンセ、ストリングスとかってことね。今までのシリーズを読んで頂けてると感じが伝わって、それぞれBUSにまとまってるはず(笑)
で、そうやって選んだその曲を彩る基本をしっかり作って行くことが、その先に向けて重要です。上物処理の基本は先の三要素を邪魔しないようにしながら、いかにカッコいい音にするかだと思う。順位を決めて音を決め込んで行くと、必要無かった音が意外と出てきます。
派手なことをあんまりしないのに上手いと言われるプレイヤーはここのオケに対する自分のパートのバランス感が素晴らしいですよね。アレンジャーがミックスもするタイプのメリットはここでアレンジに戻れるとこだよね。個々の楽器を実際にどうするかって言うと、この部分は過去のシリーズも合わせて読んで下さいませ。
「強く」してから「弱く」するのが上物を活かすコツ!
個人的な手法の基本として、まず1つ1つの上物トラックの音をソロで強い音にします。次に主要三要素と一緒に聴き、その上物の邪魔な要素(周波数的に被っている部分)を削ってい行きます。これは例の周波数と時間軸(「MIXテクニック基本編EQ⑥:最先端のEQは時間軸で作る周波数の住み分け」)でやってきます。
この時に先に決めた三要素のボリュームを可能な限り触らないのが鉄則で、ここを触るとバランスの基準がどんどん崩れるので作業量が激増します。
ここは最初から他の音を聞きながら作業しないと意味がない的な反論があるかもしれないですが、こっちの方が断然好みです。自分の曲なので、可能な限り自分が入れた音は最大限に活かしたいと思うので、邪魔者扱いよりも名脇役の方がいいですよね!なので、後ろに下げたい音は一旦しっかりした音にしてから音の前後を作る様にしていくと、後ろに下げた音もちゃんと存在感が残ります。
この音像の下げ方のポイントは、現実でどうなれば音が遠く聞こえるかを再現することです。
後ろ奥音は離れた場所にあるだけで音そのものは変化しないのでまずしっかりした音を作ります。で、それが遠くで鳴っているので耳に届くまでのいろいろな要素でその輪郭がぼやけてくる。
なら、そうなるように音のコンプなりでアタックを弱めたりや、EQで軽くハイ(角)を削ったり空間系をインサート(これは「実際のMixの流れ編 Vol.7:Bass編②ベースが占める音域と整理」で触れてます)で使ったりで距離や位置を調整します。
後ろにしたい音がすぐに聞こえずらくなっちゃう人はこういった下処理を意識してみてください。MS系のプラグインとかWavesのCenterみたいなのプラグインで、センター音だけを更にぼやかすと、空間の構築が上手く行くと思う。後、あえてS1みたいなボチボチのクオリティのwidth系で位相を崩すのも後ろに下がっていきます。ちなみにぼちぼちじゃない本気のWidth系はNugenのシリーズがお薦めです。違いは位相への影響が少ないの音やせが少ないので、気になった方はチェックしてみてください。
やっとご紹介できた!27マスの意識の極意
結構最初の方の「実際のMixの流れ編 Vol.1:曲が書けた!さあMIXだ!のその前に」」に書いた9マス(MIXでは27マス)の意識をここでしっかりと使います。
改めて書くと、Low、Middle、Highの周波数の縦列3個とそれぞれにCenter、L、Rがあり、さらに。Front、Behind、Rear(BackだとBになっちゃうので)の合計3x3x3の27個の音の置き場所を意識します。
一番前のMiddleのLはギターでRはシンセで、MiddleのCenterのBehindにピアノ、MiddleとHighのLのRのRearにストリングスみたいな感じですね。周波数帯はもっと細かく間を取ってもいいのですが、中途半端なパンとかって意外とメリット少ないです。
歌入ったらピアノはMCBで、2番のAメロはHLFにあるシンセを目立たせたいとかね〜。俺の持論&造語なので他にいってる人いないと思いますが、なんかかっこいいでしょ(笑)
これをアレンジのタイミングでも意識してるとかなりミックスがしやすく、人に印象が残りやすいオケになってると思います。
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