自力でOZONEを越え!プロ並みの音圧を稼ぐための下処理の話 ①

音圧がうまく稼げない人は要チェック!

今年の春にあまり得意ではないTwitterを始めて見かけるのが「〜に比べて音圧がない」「マスターに〜っていうプラグインインサートしてます」的なフレーズが定期的に出てくるなと。

で、かなりの人がiZotopeのOZONEとかにお任せな感じなのかな。

まあ、最近のAIの精度がすごいのでそれなりには形になるよね。でも、ほんとそれなり

何が行われてその結果が出てるかを本当に理解できると簡単にOZONEなんか越えられます。

これは断言できます。今までの業務のミックス作業の中でOZONEを使った(正確には自動処理に任せた)ことはないです。A.O.MのSakura DitherとOZONEのディザを使い分けたり、独特のモダン感のあるリミッターを選ぶことはありますが、ミックスバランスを任せたことがないし、そもそもミックスってマスタートラックとか、ステレオファイルに何かして一気にどうこうする話でもない。

それぞれのトラックを確実にコントロールできてればマスタートラックの時点でそこまですることないんだよね。それができてないならお仕事でミックスできるって言っちゃだめだと思う。

それぞれのトラックを確実にコントロールするのが音圧への近道!

それぞれのトラックを確実にコントロールするって「具体的に何するの?」「それがわかったら悩まないよ」てなりますよね。なので、日頃の作業でここを確認し判断して作業してるって視点で進めてみようと思います。

①ピッチとタイミングは一番最初に処理を終わらせよう

音圧の話なのになんでピッチとタイミングって思う人もいると思うので、サクッと説明すると楽器隊などは発音のタイミングが揃った方が勝手に音圧がでます。意外と意識されてないですが、演奏がうまいバンドはそこが凄いので音の存在感が出てるんだと思います。

特にドラムと竿ものはタイミング合わせは結構効果的で、特に低音が必要なバンドものほどタイミング合わせが有効です。逆にいうとプラグイン処理をした後にタイミング等をちゃんと揃えると必要なかったプラグインがいろいろと出てくると思うので、試すだけ試してみてください。

ピッチとタイミングの修正はミックスの前の下ごしらえだと思って最初に終わらせましょう。

・タイミング修正が先!リリースの長さはムラはアマ感全開なのでご注意を。

ここに関しては前にまとめてるのでサラッと書くと、Melodyneをはじめとするピッチ修正系って一度ソフトに読み込む製品が多いので、プラグインに読み込む前の波形編集(テイク管理なども)で出きることは全て先に終わらせるタイプです。

まずは音の始まりのタイミングと音節の長さの調整(特にリリース)を行います。ディレクションがうまくいってないボーカルレコーディングは語尾の伸ばしが適当にバラけてるので、そこは全部揃えていきます。ギタリストも多いのですが、自分フレーズが何拍かを把握してないことが多く感じます。仕事にギターを弾いてる人(バンドマンじゃなくてね)はこの辺かなりしっかりしてるので、フレーズの長さを完璧にコントロールできてギターはなんぼかもしれません。

楽器をやってる人なら頭は自然と意識するのは音の切れ側の意識を強くしてみてくさい。俺はそういった人たちの演奏レベルに達することができなかったので、クリックを聞きながら普通に数えてます。

エンジニアも音価を意識することはかなり大事だと思います。ちゃんと「録る」の部分の音の質の方ばかりに意識がいって、この辺が甘いな〜って思う人が多いくなってきたよね。昔のディレクターとかエンジニアってこの辺すげー怖かったもん。そのおかげ(若干のトラウマ。。)もあってか俺と仕事するとその辺結構突っ込まれるので、次の現場では大体みんなできる様になってたりするので、そういうのがちょっと嬉しい瞬間だったりします(笑)

逆にこの辺が全く気にならない人が来ると「この人はプロだな〜」とも思います。

・ピッチはオケの中で修正が必須!

ピッチ修正をしてるのにしっくりこない人はここがポイントかもしれません。

ピッチ修正は絶対にオケを聞きながら(やりにくかったら上物とベース)をやる必要があります。これは全部がソフトシンセならど真ん中でもなんとかなりますが、生楽器が入ってるとそのど真ん中のピッチが絶対の正解じゃなくなります。

わかりやすく書くと、定規で何本か並行に線を引いた隙間に手書きで線を引くと、手書きだけ目立ちますよね。これがソフトシンセベースのオケです。

今度は全部の線を手書きで線を引くと、全部がブレてるからこそ、それぞれの線の違いもそんなに気にならないですよね。(似たように真っ直ぐ線をかけるかは技量=練習の結果なので別問題ね。)

つまりピッチ修正は上物やベースが鳴ってる状態で、違和感ない所に耳で合わせるのがその曲のベストピッチだと思います。ハモリも一度いい位置を見つけられるようになると、うまくいってないのはすぐにわかるようになります。ギターのチューニングと一緒で「ここ!」ってのが聞き取れる感じに近いです。

その耳で判断ってのがむずいわ。。って人もいると思いますが、人間の耳の精度はかなり高いので、合ってるかどうかより違和感をちゃんと感じれます。違和感がなければそれでOKでいいと思います。この辺は以下のリンク先でまとめてるので、ご興味あればご確認ください。

納得いくところまで行ったら、一旦バウンス(StudioOneだとレンダー)して、一度オーディオにしてしまいます。戻らなくていいところまでやるのが①なので割り切りましょう。

②波形レベルでの音量整理

次に各トラックがちゃんと狙った音量に収まるように調整します。ここもコンプをかける前の話です。今までの流れを振り返りながらいつも出てくるWAVES SSL EV2 Channel みたいなコンソール系のプラグインで説明します。同じことを好きなプラグインの組み合わせでも大丈夫です。

・まず適切な音量か?

低すぎないか?高すぎないか?を確認し、問題があるならインプットレベルもしくは波形自体の音量を直接触ってレベルを適切な範囲に収めます。

数字を書くとそれに引っ張られるのであまり好きではないですが、それぞれのトラックのレベルが-12dbくらいに収まってれば自ずとバランスが取れてきます。必要な調整をした後にアウトプットレベルでそれくらいに調整します。(こういった作業が一気にできるのでコンソール系が楽ですね)

その段階で聞こえる音が小さいなら、そもそものスピーカーやヘッドフォンのボリュームを上げてください。で、いつでもその音量感で作業してください。

ボーカルのトラックでよくある平歌とサビの波形のサイズかなり違う場合、あらかじめトラックを分けて、同じBusにまとめておいた方がいろいろ簡単です。度々書いてますが、一つの音が一つのトラックでできてなきゃいけないなんてルールはなく、そこにあるのは変なナルシシズムです(苦笑)

・周波数的に問題ないか?聴覚と視覚の両方のアプローチを

①余計な低音が入ってないか?

ここはDecibelみたいなアナライザー系でも見ながらしっかりとハイパスをいれます。

低音があればかっこいい低音が出るわけでもないですし、神経質になりすぎるのもダメなので、音の変わらない位置くらいのサクッといいです。(低音が欲しいキックとかは20hzとかでハイパス入れた方がはっきりした低音が出ることがあります。)ハイパス入れすぎるとあからさまに音が痩せるので、それの2歩手前ぐらいにとどめましょう。

②余計な周波数の溜まりや不足はないか?

これもアナライザーを見ながら個々のトラックの健康診断をします。大体ローミッドと、ハイエンドが問題ですね。ミックスの問題児である100〜300hzあたりと2〜5khzをいろんなQでカット方向に触ってみてください。そこだけで問題が解決することも結構あります。

先ほどの低音と一緒でレンジが広ければ抜けがよくなるわけでもなく、広域のざっくりと上限も決めます。ローパス(ハイカット)がある理由がこれですね。比較的分かり易いので、オケの中で歪んでるギターの9khz〜をカットしてみてください。カット前より音がグン!って前に出てくると思います。

③個々のトラックの後のbusに集まってる音でどうか?

②を進めながら、どんどん同時に鳴らす音を増やしながらもチェックします。俺の場合、楽器カテゴリーごとにbusを組んでます(後々のステムの書き出しにも便利なので)が、各トラックのソロでは大丈夫でも似た帯域が複数集まると新たな問題がうまれたりするもんです。

そこは個別のトラックをさらに触るか、busでまとめて処理するかその素材次第ですが、busで処理した方が後述のコンプ感も含め一体感が出やすいのでまとめてやっちゃいます。

この周波数の①~③を2mixなりの最終段のステレオの内容をAIが確認して、なんとか一気に直そうとするのがOZONE系のアプローチです。 周波数が無駄に溜まってるところにダイナミックEQが入ったりとかいろいろしてくれますが、そのなんとか一回で一気に直そうとする作業に何かしらの不自然さを感じたりするんですよね。

Sonarworksとかの音場補正ソフトと一緒で、元の部屋の音響バランスがいい方が修正処理が減り、その処理が少ない方がナチュラルに感じます。つまり元が良いにこしたことはないってのと同じ話です。

これが音圧をうまく稼げない最も大きなのポイント一つ目!

まとめると、この様な余計な低音や高音はそこが引っかかってそれぞれの音の足を引っ張ります。それだけではなく、整理されてないそれらが全部マスタートラックに集まるので、周波数がパンパンに渋滞して必要以上にレベルを稼いでいます。

つまりこれが音圧をうまく稼げない元凶であり「それぞれのトラックを確実にコントロールする」という今回のテーマの解答につながります。

「聞こえない=必要ない音をbusやマスタートラックに送らない」

何よりもこれにつきます。

今回、サラッと触れたアナライザーとEQの話や個別トラックの整理方法は以下のリンク先でもまとめてるので、チェックしてみてください。

まじめに書くと長文になってきたので、これもシリーズ化して分けることにしました。

後編はもう一つのポイントである「音量」について書く予定です。

他の音を聞きながら何のためにコンプしてるのかってことを深掘りしていく予定です。ご興味のある方はよろしくお願いします。

最後に。

別にOZONEが敵視してるわけではないので一文だけフォローします(笑)

個別に整理した方が確実に丁寧な処理ができ、その上で仕上げにOZONEとかを使えばさらに良くなります!



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akeru
いつの間にやら業界歴20年越えのクリエイターが表じゃ書けないDAW関連レビューやMixテクニックなど書いていきます。 キャリアの中で身につけた経験を元に誰でも独学でプロレベルでミックスやアレンジができる様になれるよ!って記事を心がけてます。 最初は友人のバンドのお手伝いで始めたレコーディングから、アレンジ力が評価されプロデューサーという仕事に到達。その後、様々なバンドやシンガーさんの作曲からレコーディング、ミックスまでをまとめてうける用になって早20年近く。激しめのバンドものからR&B、HipHopを幅広く受けてます。 以前はアウトボードマニアでしたが、いつの間にやらIn The Boxの極みを目指してます。つまり「ミックスに関してはプラグインでもいけるよ」ってのが最近のテーマです。