実際のMixの流れ編 Vol.3:ドラムのトラックの積み方①

しばらくは一番音量の面積が広いリズムから始めるのがおすすめ

前回のトラックレベルの流れから、リズム隊で全体の6割の音量バランスを確保するとしたら、やはり慣れるというか自分のスタイルが確立するまではやっぱりドラムから音作りを始めた方が良いと思う。

ということで、もはやトラックの要になってきたKickから行こう。常にトラックのメーターとマスタフェーダーのメーターをチェックすること。

実際のレコーディングだと、Kickにマイク1本ってことはあんまりなくて、ダイナミックを1本中に突っ込んで、外にU47FETとかが定番かな後サブキック(最近はSOLOMON MiCS LoFReQばっか)とかを立てることが多い。Earthworksのセットだったり、Beta52AとBeta91Aの組み合わせだったり、やっぱり曲にあわせてキックのマイクは全然違うよね。

で、意外とそれぞれのマイクの役割を理解してない人が多いなと。

突っ込んだマイクをKick_in、外に有るのをKick_outとすると、Kick_inの音はビーターの音をメインに拾ってるマイク、つまり「ビチビチッ」としたアタック音=点の音がメイン。外のコンデンサーやサブキックは「モフッ」ていう抜けが悪いけど、低音や音像の大きさを録るために立ってる。

何を言いたいかってい言うと、Kick_inに低音感を求めて低音のブーストをしても嘘くさい過剰な低音感しか作れないし、Kick_outにエッジを求めてもドンシャリなEQしてもしょうが無いってことね。これが無駄な作業。時間もCPUも全て無駄。

誰かにとっては基本な事を知ってるか知ってないかで大きく差が出ちゃうから、打ち込みの人も生楽器の録音をいろいろしてみることがお薦めなんだよね。タイムリーに最近キックのマイクが難しいって話が出たんだけど、やっぱり1本でどうにかしようとしてたのね。で、SM58でもいいから外側に追加して混ぜてみてっていったら全然変わったって連絡きました。


一旦余談。DAWの操作やmixに慣れてきたくらいから、変な自信がついていかにトラック数を少なくするのが上手いみたいな時期が結構あるんだけど、それって誰のためでもないので、理想のためにはいくらでもできることはやった方がいい。EGの歪みとかも一個のアンプでどうにかしようするより、ハイゲインとクランチを混ぜた方が話が早かったりします。

さてEQやコンプの処理は前の記事を見てくださいませ。それぞれを自分の好みに作ったら、まずBusにまとめよう。名付けるならKick_busだね。こうすることで、inとoutの2つで作ったKickの音のバランスを保ったまま、次の作業ができる。後、Kick_busには、必ずコンプを掛けよう。これは音圧よりも、ふたつの音をくっつける感じだね。アタックは遅め、リリースは早めで最高でも-2db潰れるくらいで良いかな。この時にもマスターフェーダーは、前述の注意を忘れずに。

先に言うと、ドラムの音はTOPマイクにほとんど入っている(被ってる)から、個々のトラックだけでは音が完成しないので、ある程度で次に行こう。

Kick_busからプレートリバーブにセンドすると、音像とアタックが大きく上に伸びるのもテクニックだよね。プレート=鉄板なので、ちょっと金物的なエッジが足される。みんなが大好きなCLAのKickとかそういう音だよね。

お次はスネア。リズム隊のカラーを決めるから音選びは慎重に

次はスネア。その曲の印象を決めてしまうし、ボリュームのコントロールが難しい最初の難関だね。

さっきと同じ流れにすると、スネアも上と下からマイクを立てるのが一般的なんだけど、なんで聞くと模範解答の様にスナッピーの音を録るためっていうんだけど、そこで50点かな。スネアのボトムって上と全然違う音がなってるのね。低音感もあるし、スナッピーのアタックもある。トップの音ってどっちかって行ったら「コンコン」っていう音なの。で、自然にドラムの音を聴いてたらどっちもの音が混ざって耳にはいるから、ザ・スネアな音がする。だから、ボトムからも録って混ぜるわけね。

Sn_topはアタックと芯、Sn_botで太さや大きさ、金属的な響きを作るイメージ。ボトムはスナッピーの音がカッコイイわけだから、ローカットでキックの被りを減らしてからコンプで持ち上げてあげるとゴーストとかがカッコよく聴こえてくる。さっきのキックのinとOutの関係に似てる。この2つもまとめてSn_busに送ろう。で、busでさっきの感じのコンプ。で、トップはGATE、ボトムはnoGATE(ずっと共振してるスナッピーの音が大事だから)した方がいろいろやりやすい。絶対おすすめのGATEはSONNOXのOXFORD DRUM GATEです。普通のGATEくらべて、周波数とかで何の音か区別して反応してくれるので、かなり綺麗に分離をさせてくれます。

スネアはほんとに曲の印象に大きく影響があるから、スネア専用に一個リバーブを作った方が洋楽的な「バコーン」ってのが作りやすい。ドラムきっとだけをソロで聞いたらやりすぎなくらいでOK。長め広めのリバーブでいいかな。曲によってタイトの方がいいならそこはリバーブのさじ加減で行こう。

ここまでで「トランジエントデザイナーやトリガーとか使えば楽じゃん。俺ならテープシミュレーターを使う」とか思った人いたら、それはそれでいいけど、彼らの効果的な出番はもう少し先なんだな。コンプとEQでできることは、ちゃんとそれでやろう。

あえてまた言うと、ドラムの音はTOPマイクにほとんど入っているから、個々のトラックだけでは音が完成しないので、ある程度で次に。

Sn_busはのメーターをみると、盛り上がると簡単に突き抜けて来るでしょ?これはなかなか押さえきれないんだよね。アタック早めのコンプでやるのも良いんだけど、音を変えずに音量の調整って意味だとWAVESのL1、L2みたいなわかり易くいい意味で今っぽく無いリミッターの方が向いている。ここで注意したいのが、シーリング=アウトプットレベルをちゃんと下げること、これを下げないとメーターは下がらない。-2~3dbくらい頭を潰しながら、アウトプットレベルで適正な音量にしよう。-12dbくらいまで抑えられば後半相当楽です

前に書いた通り、個別のトラックでコントロールするよりも何重にも通るbusで少しづつピークを削っていくのが、ダイナミクスを維持するコツかな。

トップマイクを理解して制御すると化けます!

次にタムかハイハットかと思いきや、ここまでの流れを理解できてれば次はトップマイクだよね。

ドラムの個別のトラックの役割は、トップの音の補強とパンによる音の位置の強調かなと。トップマイクも同様にステレオのbusにまとめて、アタック遅めのコンプを掛けよう。これも音をくっつける意味合いなのでほどほどでいい。

キックとトップをソロにして、低音感が大きく変わらないところまでトップをローカット。次にスネアのキモにある200~300hzをゆるめにカット。これは何をしてるかっていうと、個別のマイクとトップマイクが狙った楽器に対する距離が違うから、同時に鳴らすと位相がくずれてよどむか音痩せするのを避けるため。カットするとすっきりする分一体感とか厚みとかが減るけど、ここも後でコントロールできるから先へ。

コンプのときにも書いたけど、トップに入るキックとスネアの音だけ引っかかるコンプ(早め&早め)で金物のマージンを稼ぐっても有効です。真空管系コンプだと金物がきれいに伸びるのでお薦めです。

ここまでの3つのbusをDrum_busにまとめて、またゆるめのコンプを掛ける。オススメはSSL/Bus Comp系。持ってないならアナログ感を歌ってるコンプならなんでもOK。

前に「プロでも使えるMIXテクニックCOMP編Vol.2:まずは仕組みを理解して正しく使い分ける」で書いたアタック遅め、リリース早めでGRがピークで−3~4db潰して、メイクアップでちゃんと戻す感じが個人的な好み。ここまでうまく行ってれば、音もくっついてキット感も出てくるし、ローミッドがどっしりとしてくるとはず。

ドラムって、整理しすぎると偽物っぽくなっちゃう。かぶりによる混沌とした音が生で聞いてるドラムの音にちかいので、EQ処理はやりすぎないことがポイントです。 

最近がハイハットが一番前に張り付く感じとかもあるから、一概には言えないのがいつも通り。

いざ書いて見ると結構長いな。ここまで半分だから後半に分けますね〜。 



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いつの間にやら業界歴20年越えのクリエイターが表じゃ書けないDAW関連レビューやMixテクニックなど書いていきます。 キャリアの中で身につけた経験を元に誰でも独学でプロレベルでミックスやアレンジができる様になれるよ!って記事を心がけてます。 最初は友人のバンドのお手伝いで始めたレコーディングから、アレンジ力が評価されプロデューサーという仕事に到達。その後、様々なバンドやシンガーさんの作曲からレコーディング、ミックスまでをまとめてうける用になって早20年近く。激しめのバンドものからR&B、HipHopを幅広く受けてます。 以前はアウトボードマニアでしたが、いつの間にやらIn The Boxの極みを目指してます。つまり「ミックスに関してはプラグインでもいけるよ」ってのが最近のテーマです。