まずは前回のおさらいと機材にかける予算の配分に関して
前回のもはや録音時必須!お薦めコンプをご紹介!①コスパ最高モデル編で、自分で使ったことがあり、これはちゃんと使えるコンプだなと認識している20万円以下のモノラルコンプレッサーをご紹介していきました。
いきなりですが、どんな機材もニーズに合えば、値段の上下で良し悪しが決まるものではないという持論があります。
どういうことかというと、録音って歌や楽器だけではないんですよね。例えば、セリフやナレーション、オーディオブックなどの収録などもありまして、それに求める結果が違うので一概にこれ1台でなんでもOKというわけにはいかないもんです。
前者のような音楽の場合、音質やカラーなどを追求しますが、後者の場合はカラーをとことんなくし確実に聞き取れるようなダイナミクスなどを追求します。ゴールが違う時点で選ぶ機材が変わりますよね。音の悪さや古さが欲しい時もありますし。
また、マイクやマイクプリ、オーディオインターフェイスのクォリティと見合ってない場合もあります。高級なマイクを買ったけどマイクプリは始めた頃に購入したオーディオインターフェイスの内臓のマイクプリだったり、高級なマイクプリを買ったけどマイクが初級者用のコンデンサーマイクのままだったりすると、変化は感じれてもちょっと性能を出し切れてないことが多々あります。
冒頭から重めの感じになってしまいましたが、もっとラフに書くと
予算に対して、主要な要素の価格帯をある程度揃えてから、その中の一部をアップグレードする感じが一番おすすめです。なぜかというと、今の10万以下の機材達って、僕自身が制作を始めた頃に比べて圧倒的に音も機能も高いのに、半額以下とかで売ってるようなものでして、、、よほどの粗悪品じゃない限り「音が悪い」ってことは少ないです。
言い換えるなら、「その製品よりももっと上はあるけど不足ではない」といった感じでしょうか。
今回からは高価だが対価に見合う性能や音質をもっているハイエンド系を順番にご紹介できればと思っています。このレベル機材達は業務において、やはり選ばれるだけの魅力を持っています。
Empirical Labs Distressor EL-8X&EL-8、PUMP
Empirical Labs Distressor EL-8Xの使用頻度が高いので、まずはこの機種から行きます!
数年前からプラグインになってこともあり、一気に知名度が上がりましたがもう20年以上は現場に君臨する大御所ですね。見慣れないボタンがいっぱいあるのでぱっと見難しそうですが、実際の使用方法はシンプルです。各ボタンの細かい説明は代理店さんのHPにお任せします。
なぜこれを使うのか?というと。
- アタックとリリースの守備範囲が無茶苦茶広いので、実はシンプル。
- コンプの基本設定を決めた後のカラーリングがボタン一つ。
この2点になります。
アタックに関しては、ハードのコンプレッサーの中では最速に近い設定が取れるので、どんなに強い音も捕まえられます。例えば、808系のキックの音とかは1176とかだとちょっと抑えきれない時があるのですが、Distressorなら対応可能です。
コンプの設定の探し方はこちらの記事をチェックしてみてください。
次にカラーリングなのですが、これが絶妙なのに「Audio」というボタンを押すだけでOK。
押すごとに切り変わっていくのですが「上を明るくしたいならDist2」「下に厚みを持たせたければDist3」くらいの感覚で大丈です。HPはハイパスの略で、Distとの組み合わせで低音感が変わるのでお好みでいいかと思います。
製品説明をみると、こういう設定にするとこういう動作のコンプレッサー的挙動をするよみたいなのが色々書いてありますが「即戦力のCOMPテクニック②:方式を理解しないと遠回り!」で書いたように、方式の合う合わないを理解してると、この機種がいかに守備範囲が広いコンプかわかって来ると思います。
現場によってはコンプレッサーの数が足りないことも多く、ボーカルなど重要な音から重要な機材が選ばれていきますが、個人的にはこの機種が数台入ってるところだと安心してトラッキングしていけます。
音の傾向というか使い所なのですが、FET系コンプで使えそうなところはこの機種で代用することが多く、独特の中低域の安定した太さがあるので、そこを重要とする楽器類にはかなり重宝してます。
もちろんボーカルでも使えるので、製品マニュアルに載っているOPTモードシミュレートの設定からスタートするとOPT系の苦手な部分でもあるアタックとリリースをより詰めれます。
通常版のEL-8とオプション機能が追加されているEL-8X(日本のスタジオはこっちが多い気がします)があるのですが、正直オプションの部分を有効的に使ったことがあまりないので、もはやどっちでもいいかなというのが本音です。
イメージリンクというオプションの機能は、Distressorをステレオで使いたいってときにリンク精度があがる機能なのですが、機材の選択肢がかなり増えた現在に、あえてDistressorをステレオコンプとして使わないかなという感じです。
ラインナップの中にFATSO EL-7xというぱっと見ステレオモデル?的な製品がありますが、こちらはテープシミュレーター的な製品になるので今回は割愛させて頂きます。
ちなみに最近発売になって、同社の500シリーズのPUMPというモデルが簡略化ながらかなり高評価でしてすぐにでも欲しいのですが、全然入荷が無いらしくお預けされてます(笑)
今回も読みたかった内容そのもので最高でした。
場合にもよると思いますがEQは録音時はかけ録りはあまりしないのでしょうか。
よろしくお願いします。
コメントありがとうございます!お気に召して光栄です。
ご質問の録音時のEQに関しては、ここでざっくり書いた後にコラムにしてみようかと思いますね。
端的にいうと場合によるが「個人的には使う方」です。いろんな理由や意見がありまして、、、
この場合によるがの場合が一番大きなポイントになるかなと。
一番の理由は、録音時だとEQを掛ける前に、マイクの種類、角度、位置などなど、楽器の場合はさらにそもそもの楽器の種類をでもっと大きく音を変えることができます。
例えば、ギターの場合、ギターやアンプの種類を変えることでそもそも欲しい音に近づけていきます。なので、複数台用意していく様になってきます。クランチならこのギターにこのアンプとこのマイクとマイクプリみたいな組み合わせがどんどんノウハウ
アンプを重ねるのかとか、同じフレーズを違うギターで被せるのなどなどもっと重要な要素がいっぱいあると思ってます。
で、それをやり切った後に、オケの完成系のイメージに合わして「本番の音をモニターに返したい」って理由で使います。どっかでも書いたのですが、後でこうなりますより(=今よりかっこよくなります)も、今なってる音がいい方がプレイが絶対的に変わるので、モニター音はかなりこだわります。
これはある種理想的な場合なので、時間や機材等が限られてるときはEQの出番です。
ということで、近々この辺をまとめてみますね〜。
ありがとうございます。
とても参考になります。やはり完成形がイメージできているのが大事ですね。
あと、前回の記事をみてRNC500を買いましたがとても気に入りました。あの価格なら複数台欲しいです。Vocal Leveler500は今入荷待ちだったのでまた試してみます。