基本が大事って結局どういうこと?数字と感覚のお話から
いろんなプラグインをなんとなく使ってた人が必要に合わせて自分でコントロールできる様になるEQシリーズの①です。
ミックスをする(始める)際に絶対に身につけていなければならない基本テクニックであるイコライザー(以降、EQ)ですが、わかったつもりになってると意外と成長が止まりやすいので基本から始めたいとい思います。
この楽器はここの周波数をイジれ!的な細かい説明は他の誰かに任せるとして、EQを簡単に言うと決めた周波数をどれくらいの幅で増減させるかを行うモノ。その増減をする際に幅(Q)がどの様に変化するかが各EQの個性とも言えるワケです。
シンプルながらも奥が深い世界です。
誤解の原因:その設定が有効なのは「その曲の中で使われたその音」のみ。
突然ですが質問です!
「EQって比較的シンプルなはずのに、思い通りに行かないことありませんか?」
さらに質問です!
「雑誌やWebでみた設定を適当に当てはめて必要かどうか分からないEQをしてないですか?」
これが間違いのスタートです。
少々辛口で始まりますが個人的にはEQの設定の本がある時点で苦笑でしか無いです。。
WEBで「EQ 使い方」とかで、検索すれば情報過多過ぎて逆にわからないくらい出てきますよね。実際にそこの内容が書いてる人がどのレベルのお仕事をされてるかもわからないですし、なんでも鵜呑みは危険です。
それを試してみて納得する結果が出た内容だけを集めていくのが本ブログのテーマでもある「自分でプロ並みのミックスができる様になる」ことに最短距離だと思いまして、自分のキャリアの中で身につけた実際に行ってる内容のみでご紹介していきます。
例えば、KickのEQを例にすると「(ソフトシンセだろう生楽器だろうと)ローカット入れて、6~70hzをブースして、べースとの干渉を考えてローミッドを削って、2~4khzの倍音の辺りをブースト~」的な同じ様な設定が書いてあることが多いですよね。
もちろんミックスなんて結果が全てなんで間違ってるとは言いませんが、だいたいのソフト音源は製作時に既にかなりの処理をされている訳で、「生音の録音でなら必要な下処理」は必要無い事が多いです。
つまり雑誌やWEB等で有名エンジニアが言ってる設定が必ずしも「何にでも絶対効く技」ではないのです。その設定は曲も違えば、生を収録したものに対する設定かもしれないし、サンプルやソフトに対する設定かもしれない訳です。
つまり、その設定が有効なのは「その曲の中で使われたその音」のみです。
曲が違えば周りのトラックの音も違うし、そもそも処理する音が違えば、処理方法も違うってことですね。つまりそのエンジニアがその曲の中でその音に対して行った処理の説明が書いてあるだけです。
有名プラグ位のプリセットを研究してみると勉強になります。
いきなり自己流で設定し始めるより、WAVESやUAD-2みたいプラグインには有名なエンジニアさんが作ったプリセットがいっぱい入ってたりします。
それ参考に真似をしてその結果を経験値として貯めるのは有効な学習方法だと思います。プラグインの名前に「何の音をどういう時に使う」的なヒントがあるので何種類か試していく中で好みに近い設定があったらそれを分析します。同じソースにいろんなプラグインのプリセットを当ててみてください。ギターのトラックにボーカル用のプリセットが合うこともあるので、しらみつぶしにやってみるのもいいと思います。
「この設定の時に音がどうなるか?」
といった音の変化に対する感覚を体に染み込ませることが大事だと思います。誰だって自分で0から設定を作れたり、プリセットを自分で思い通りに調整を加えられうようになるのが最終的な目標にしたいですよね!
模倣は最高の勉強です。オリジナルを出す前にプロの技量を知るのは決してカッコ悪いことではないです。
カリカリミックスへの落とし穴!潔癖症的EQ癖はやめよう。
EQやCompをかけ始める前にまずそれぞれのトラックのボリュームフェーダーやPanで調整をすると問題が解決することが多々あります。しっかりとしたレコーディングをした場合、ある程度音を決めうちで録音するので、レコーディング時に聞きずらかったり、プレイヤーが望まないバランスになっていはずです。
周波数の被りはモニターをモノラルにすると、どセンターに縦列に全ての音が鳴るのでそこで被りやすい同じ帯域にいる音を把握できます。ボーカルとギターなどはかなり被りやすいし、キックとベース、ベースの上の方の帯域とボーカルのつながりなど、いろいろ見えてくるものがあり、それをステレオに戻し、センターに奥音以外の音のPanを左右に広げていき、それでも、ちょっと邪魔だなという部分を初めてEQしていく方がベターです。
そういった作業をする前に闇雲にプラグインをインサートしはじめて、各トラックの干渉を過剰に処理した結果、芯の無い音ばかりになってしっまっている状態のミックスをよく見かけます。ミックスを初めて1〜2年くらいで「自分で出来てる」と思ってる人が一番ここにハマりやすいと思います。
実際にこの状況が本当に多いんですよね。ちょっと古いですがリンプ・ビズキットの3rd以降で世界中のEQのスタイルが一気に変わった気がしました。(それ以前は先ほどの方法で必要最低限のEQ処理を行ってたんですよね。)
この余計なもの(=聴こえない音)はすべて切って分離感を付けるのが世界的に流行り、その流れをアレンジの音が多いJ-POPにそのまま持ち込まれたのですが、元々海外の人に比べて声が細め&細かいアレンジが好きな人種なので、そのままだと実は合わないんですよね。で、それに気づいた人たちが日本流に試行錯誤してきて今に至ると思います。
過剰EQ時代からだいぶ普通に戻ってきたのですが、その頃売れた人なのか、そこを引きずってる人とかの発言権がいまだに強く、鵜呑みにしてカリカリミックスがまた増えてきてしまってる気がします。
原因としてはやはり情報過多すぎて「EQ=必要」というのが無意識の中に刷り込まれてるかなと思ってます。
とくに最近のアレンジの少なめのトラックものは干渉が少ないのでサイドチェインとかで逃げた方がそれぞれの音の強さを保ったまま棲み分けできたりします。これは別のタイミングでご紹介します。
「必要がなければEQはいらない」が基本!
どうしてもすべてのトラックにプラグイン挿したくなりません?(笑)
でも必要ないことは逆効果しか産まないんですよね。音は悪くなるし、CPU負荷はかかるし。
あまり意識されてないですが、アナログと同様にデジタル(=プラグイン)でもインサートすればするだけ劣化します。(ここは24bitと32bit flotの違いの下りにでも)
まずミックスにおける作業音量を固定するところから入ります。
マスタートラックのメーターで、キックとベースなどの低音楽器のみを鳴らして、 -12db ~ -8dbくらいに鳴るように各トラックを調節して下さい。それで聴こえる音が小さければ、モニター環境のVolを上げてください。あくまでザックリとした基準です。
ここにTOMOCAとかHAYAKUMOとかのハードのVUメーター(ここに関してはプラグインじゃダメ)があるともっとちゃんとした環境を作れます。そこで決めたスピーカーやヘッドフォンのVolを記録して、毎回その設定で始めると結果のバラつきが減るはずです。
全く同じオケ2つ用意して、片方の音量を気持ち大きくし交互に再生すると、音量を上げた方が音が良いって思っちゃうくらい人間の耳は適当なので、自分の外に判断基準を作らないとなかなか安定はしません。
ソフト音源がメインの人が多いと思うのですが、さきほどの音量設定にすると各トラックのフェーダーが意外とかなり低い位置になってくると思います。つまり最近ソフトシンセは初期設定でかなり音がデカいんですね。試した時にパッと聞きがかっこいい方が売れやすいのでそれくらい派手に作り込まれてます。
それにもかかわらず、0dbに近い方が良い的な古い話を何の疑いも無く信じて、マスタートラックはバンバン赤!リミッターでギュー!!何とか0dbに収まった的な(苦笑)
この状態だとミックスにはなってるんだけど、なんか音が悪い気がする(実はNOダイナミクス&実は歪んでるだよ)、あの人の作品より音が抜けない、音圧がないな〜。。
→何か他に良いプラグイン無いかしら?→それでも音が悪い気がする→何か他に良いプラグイン無いかしら?
っていう、立派な「プラグインゾンビ」の始まりです。そんな人がアウトボードのコンプなどに魔法の様な夢を抱い購入しても、正直どうしようもないです。お金をかけたけどやってることはプラグインゾンビと変わらないです。
アウトボードをちゃんと使える人はプラグインだけでも出来ます。
ちなみに早めに言っておくと、言葉は悪いのですがサイトの特質上アンチIZOTOPE(誤解なく!)です。
便利すぎて人間の能力を下げちゃうというか、このブログの根本にある感覚が身につくタイミングを失いやすいんですよね。まあ、すごく便利で音もいいのでガンガン使ってもらって良いのですが、少しお勉強したい人はしばらく封印しておいてくださいな。
数年前まで小規模な商業スタジオばりにハードウェアを揃えていた筆者からすると、はっきり言ってミックス時にアウトボードの方が音が絶対に良いってのも正直無いです。
アウトボードをちゃんと使える人はプラグインでの作業もちゃんと出来るんですよね。
アウトボードだと気にする入出力の音量感とかメータをちゃんとみるとかプラグインでも忘れずにできるからだと思います。
ここが時「感覚を覚える」ことに繋がっていきます。
マスタートラック(実際は後述のサブマスタートラック)のメーターで、低音の合計で -12db ~ -8db、ボーカルと上物入って-3~4dbを狙って音量を調整をするそれがスタートポイントです。
このレベルの積み方の詳細は「実際のMixの流れ編 Vol.2:トラックレベルの間違った理解をやめよう」にてご紹介してますので、気になる方はチェックしてみてください。
かの有名なトニー・マセラティが良い言葉を言っています。
「音量や音圧を稼ぐのはマスタリングエンジニアの仕事だ。僕には関係ない。」
だっけかな?大体ですがそんな感じ。ちゃんとしたミックスが出来ている2mixなら、いくらでもそのバランスのまま音量も音圧も上げれるので、別の工程として考える位で丁度いいもしれません。
次回からは実際の処理方法について段階的にまとめていきます。
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