実際のMixの流れ編 Vol.11:ボーカル編③ 実際の処理を始めてみる

まずはオケの中で歌詞をみながら聴き込むのがスタートポイント

前回までで、ピッチとタイミングがいいレベルまで揃ってる事を前提に進めます。 

次に何をするかというと、コンプだEQだって言う前に、ここまでにある程度仕上がっているリズムとベースと一緒に鳴らしてオケにおけるボーカルのレベルを決めましょう。ここで決めたレベルは基本的に最後まで変えないつもりで決めることが重要です。

何故かと言うと、聴こえなくなったからフェーダーあげたりコンプを掛けてみる→他の欲しい音が聞こえないからそっちもいろいろ→また聴こえない音が出てきた、、、、的なループにハマって、あっという間にマスタフェーダーがクリップして、リミッターだ〜〜。パンパンなので歪んじゃうからクリーンなリミッターを探して次から次に。。。。

作業時間は増えてるのに音も良くならなけばCPU負荷も無駄に増えて、自分のマシンのCPUが良くないからプロみたいな音にならないよ〜ってマシンやプラグインのせいにする。ミックスがうまくいかないって人の中でこの負のループにハマるのが一番多いんじゃないかな。

先にいうと、プラグインのEQやコンプなんてある一定レベルの製品があれば充分でそれ以上は趣味に近いよね。ちょっと辛口で申し訳ないけど、よくSNSとかで何かが安くなる度に騒いでるのみるけど、殆どの人が実際には必要ないものを煽られて買っちゃってる気がする。新しいメーカーを見つけてはこれ良いよって。そういう人ってほんとにMIX出来てるのかな?って。道具として揃えるのが好きなだけで、そもそもが身についてないじゃないかなとも思う。GUIがかっこい方が音がいい気がするのは楽しいプラシーボだよね(笑)道具のかっこよさってのもMix作業の楽しみのひとつでもあるから否定する訳ではないです。

ある一定以上って何かって言うと、純正の痒いとこより気持ち使いやすいレベル。WAVESならRENESSANCE MAXXでも十分だし、利便性とかで行ったらFabfilter辺り。リバーブは差が大きいから、何個かサードパーティ製を使うけどね。でも、最近の純正プラグインはかなり進化してるから、何となくで使ってみるとびっくりすることもある。いきなりサードパーティ製じゃなくても良いんだなって考え直させられることもしばしばです。昨今のAI系や整理系のは良いちゃいいんだけど、濁りがあることによる音楽のコクみたいなのはちょっと失われたてきた気がします。プラグイン以前というかDAW以前の楽曲っていまだにすごく音がいいなって思う作品がたくさんあり、もちろんその時代の道具しか使ってないからね。いろんな道具を使うことが目的じゃなくて、やりたいことに適切な道具を選んでクライアントやリスナーを感動させることのみがミックスの目指すゴールだと思います。

レベルの積み方に関しては以前書いた「実際のMixの流れ編 Vol.2:トラックレベルの間違った理解をやめよう」でも目を通してもらうとして、そこからどうするかなんだけど、その状態で聞いていて問題点を探すところから始める。

プラグインを挿す前にここをチェックしよう!

①すべての歌詞がちゃんと聞き取れるか?

②突発的なピークはないか?

③音質としてオケに対する抜けはどうか?

④音像の大きさはどうか?

この4つが大丈夫なら、録りが良かったってことだし、下ごしらえも大丈夫ってことだから、オケに合わせてオートメーションを書いたり空間系をいじったりするだけで、その音自体にあまり余計なことをしなくてOKだったりします。ちゃんとしたレコーディングエンジニアがちゃんとした環境で録った音ってはここがスタートなので、ミックスの技量より素材が大事ってのにつながります。ミックスにこだわる前に録りに全身全霊で取り組んでくださいませ。自分自身への戒めでもあります(笑)

さて、①と②はコンプとオートメーションの出番だね。EQとコンプはどっちが先かって話なるんだけど、EQの方が音量が大きく変わるのと、低音の量でCOMPの掛かり方が大きく変わるからCOMPより前のほうがいいかなと。なのでEQ→COMPをデフォルトでいきます。もちろん、コンプで膨らみすぎたり抜けが悪くなることもあるので、それを補正するEQってのはあります。

③も結局④の音像の大きさにもなるんんだけど、まずは低音の処理から。100hzより下はバッサリ。もうこれはバッサリで良いよ、音じゃない音域だから。ただ、100hz~250hz辺りに声の安定感を左右する音域があるから気をつけよう。絶対100hzより下を切れって話じゃないのでお気をつけくださいませ。

次に中低域の抜けをチェックする。200hz〜400hzを探すと、削った方がスッキリする帯域がある。録れている声質によって考えるところでもある。元々鼻声な人もいれば、録った環境(ブースのサイズとかマイクのキャラ)によって影響が出ているのでチェック。

その後はグーンと上まで行って4~8khz辺りを広めのQで抜けるところを探そう。この辺は倍音だから声質が大きく変わらずに聴こえ方が変わってるくる。男性なら4〜5khz、女性なら7〜9khz辺りかな。この辺を+3dbくらいつくとかなり抜け感がかわります。それでも結構ざっくりで良いと思う。個人的には、声の中核である800hz~2khz辺りを触るのが好きじゃないだよね。変わりすぎるし、うるさいじゃない。その辺って逆にオケの方で削っていけば自ずと抜けてきます。

細いQで削りまくりエンジニアの記事もあるけど鵜呑みにしないほうが良い。変な共鳴を拾ってる時だけダイナミックEQとかディエッサーで処理(これを自動でやってるのが人気のSOOTHE2とかね)をすれば良くて、無理やり荒潰ししなくていいと思う。そういうタイプの人のミックスって「THE 日本」な感じのクリアだけど線が細く歪みっぽい感じになってるんだよね。リスナーとしても正直好きじゃない。

前半に軽く書きましたが濁りってのはパワー感にもつながるから、なんでも整理すれば良いわけじゃないよね。生の声や楽器(特に生ドラム)なんて周波数が濁りまくってるから、ああいう厚みというか説得力があるわけだから、そこを整理しすぎると逆に不自然になってくんだよね。

コンプの意味も2つの視点でチェックです。

次にコンプなんだけど主に「低い音量を支える」のと「ピークを押さえる」の2点を強く意識してメーターと出音に集中しよう。前回の下ごしらえが出来ているなら、軽いコンプレッションで更にならすというかオケの中での聴こえ方を安定させるだけでOK。

目にも書きましたがWAVESのMV2が地味に優秀だと思います。さっきの太字の2点だけに特化したフェーダーが2つあるだけのシンプルかつ自然に仕上がります。無理してヴィンテージモデリングを使わなくてもよいかな。使いたい気持ちは凄く分かるけどね〜。JJPのFairchildはざっくり用途ではよく使うけどどっちかっていうと、サチュレーター的な意図が大きいです。

曲の中で何箇所も出てこないピークを潰すコンプは、その瞬間だけが掛かる設定でOK。それでも、潰しきれなかったり、掛かりすぎて音が変わるようだったらオートメーションでコンプへのあたり方をコントロールする感じで回避していこう。もしくは別トラックに切り出して、そこだけのための設定を作るとか波形編集の世界で対応した方が話は早いですね。

低い音量は、一番聞こえづらい音の値をスレッショルドのスタート地点にして、設定をが探して見て。その後といちばん大きい音との差をならすのがコンプでやりたい事だからね。

MIXの中で一番重要な④ボーカルの音像に関しては、空間系の処理がかなり重要になってくるので次回。空間系のプラグインとかCenterとかS1みたいな位置決め系のプラグインの話にもな掛かってきます。お楽しみに。



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いつの間にやら業界歴20年越えのクリエイターが表じゃ書けないDAW関連レビューやMixテクニックなど書いていきます。 キャリアの中で身につけた経験を元に誰でも独学でプロレベルでミックスやアレンジができる様になれるよ!って記事を心がけてます。 最初は友人のバンドのお手伝いで始めたレコーディングから、アレンジ力が評価されプロデューサーという仕事に到達。その後、様々なバンドやシンガーさんの作曲からレコーディング、ミックスまでをまとめてうける用になって早20年近く。激しめのバンドものからR&B、HipHopを幅広く受けてます。 以前はアウトボードマニアでしたが、いつの間にやらIn The Boxの極みを目指してます。つまり「ミックスに関してはプラグインでもいけるよ」ってのが最近のテーマです。