実際のMixの流れ編 Vol.6:Bass編①実際に作業に入る前に

1.シンプル=故に難しい。そもそもベースの役割を再確認

リズムトラックをまとめたら次はベースだね。実際の処理の前に、アンサンブルの中でのベースの意義に軽く触れていこう。もちろんこれも持論だから解釈はお好きな様に。

前回の最後に書いたけど、以下の理由もあってベースは特に難しいと思う。

バンド経験やレコーディング経験の少ない人だと、比較的地味なイメージのベースの役割を舐めてる(笑)ギターやドラムとかはかなりこだわるくせに、ベースの打ち込みが雑な人多いよね。

ベースの役割を改めて考えてみよう。低音を支える。リズムをキープする。この辺は誰でも言えるよね。じゃあ、もうちょっと突っ込んでみるとこんな役割を担ってます。

ルートのピッチを決める=決まっちゃう。

鍵盤でもギターでもコードがあって、それの根底になる音がルートなわけで、そこのピッチがあまいとそこから上に積んでいく音と和音が汚くなる。特に同じセンターにいる主役のボーカルが下手に聴こえちゃうわけだ。

ボーカルのピッチが悪いなって思ったとき、原因はベースから始まるオケのピッチの悪さだったりすることもある。

打ち込みも音源のサンプリンレートをちゃんと確認しよう。生の場合は開放弦のチューニングはもちろん、弦を押さえた時のチューニングにかなり気をつけよう。適度な力加減が出来てないと簡単にピッチがあがっちゃう。ギターはコード楽器だったからごまかしが効くんだけど、ベースはそういうところを気を付けないと全体に迷惑を掛ける楽器なんだよね。指かピックかでもかなり音の出方が変わるし。だからベースが上手いバンドは音が良いし、バンマスにベーシストが多いのはそういうことなんだろう。

2.実はかなり音量を占める割合が大きい

低音を支えるっていうくらいだから、ドラムと一緒でオケの中での音量はかなりでかい。EQが下手だと抜けないのにメーターがガンガンにあがる。

そういうのって大体、低音ってことばに囚われすぎて、無駄な低音を足してることが多いよね。100hz以下だけを触るとどんどん埋もれるかクリップする。この手の記事を読みすぎな人たちはすぐに20〜30hzの話をするけど、もっと大事なポイントがあって、実は200hz〜1Khzくらいの作り込みがポイントで特にトラック全体の150〜300hzがミックスの肝になってる。

べースにおける倍音の2khzだ4Khzだは、エッジの領域なので別問題かな。音量感に関しては前のレベルの積み方を参考にしてきてね。

3.環境的な要因で更に難しくなってます。

プロとアマの差、邦楽と洋楽の音像のデカさの問題とかやっぱり低音の作り込みのうまさの差だと思う。無理に目立たせなくても、存在感ががっつりあるというか、むしろ居ないとアンサンブルが成り立たないくらいの音像を常に目指してます。低音楽器だけど、どセンターの中音楽器でもあるのでミックスの中でもまあ重要よね。

ここまで脅せばもう一度真面目にベースに向き合う気になれたかな(笑)

でだ、この処理をとことん難しくさせているのが日本の一般的な宅録環境なんだよね。ここからは音響の話になってくるんだけど、今回の本題。

普通の一軒家やマンションとかだと、あっても天井は2mちょい。作業スペースは6〜8畳間の一部くらいって感じのスペースな人が多いと思う。

天井がそれくらいの高さだと、床と天井からの反射で100〜300hzが以上にブースとかされてたり、200hzよりちょい上くらいに変なディップが生まれてる。さっき触れた2khzだ4Khzの辺りも同様にいびつになっちゃうんだよね。さらに壁との距離が取れないこともあって、低音の回り込みでさらに低音ブースト。。左右の壁との距離や左右のスピーカーの後ろの空間が均一じゃないとセンターも完全にずれるし。

部屋鳴りの無いヘッドフォンで作業だ!ってなるけど、ヘッドフォンにもセンターが強く聴こえるととか、サイドが広く聴こえるとかの弊害もある。だからヘッドフォンのみでミックスは失敗しやすい。

ここが冒頭のベースが難しいって話に繋がる。じゃー、どうするりゃいいのさってなるよね。

「お薦めは同じ環境で数をこなすこと」

ある程度以上のモデルを持ってる人は、ヘッドフォンやスピーカーのせいにして買い換えずに、その機種でいろんな音楽を聞いて、どう聴こえるかを身につけることが何よりも大事。で、それでやった結果をいろんな環境で聞くことかな。この環境ってのは機種じゃなくて場所ってのが重要です。

良く複数のスピーカーを切り替えるってのを見るけど、作業場の環境が良くないのにそれをやっても余計に判断に迷うだけだから俺は一切お薦めしないです。カッコいいけどね。やっても2SETくらいで、真面目系と派手系の2種類で良いかな。それそれのデメリットを補う感じ。

後、最近色々出てくるヘッドフォンでさまざまな環境を再現する系の中ではSteven Slate AudioのVSXは意外とよかったね。SonarworksWavesのNx Ocean Way Nashvilleは悪くないけど、導入したみんなって思ったより上手くいってないんじゃない?個人的にはどうしてもスタジオとかで聞いてる音像に感じれなくてね。でも、ソフトよりも自分のヘッドフォンとかとの兼ね合いの方だと思うので、どっちかっていったらハードの問題よね。そこがセットだから悪くないのかな。余談だけど、Umbrela CampanyのHP-ADAPTERっていうヘッドフォン系の機材はかなりおすすめです。どんなヘッドフォンでもちゃんと鳴る。インターフェースのヘッドフォンアウトだと使ってるヘッドフォンが実は設計のバランスでちゃんと鳴ってないってことが多いってのは実は知られてなかったりするんだよね。

自分の中に確固たる基準を持つことが機材より大事

ミックスが上達しない原因のひとつに自分の明確な基準が無いことだと思ってます。

未だにプロがNS-10Mを使う人が多いのは、それで育った世代のプロが多いからそれが基準なんだよね。それで聞こえてる音像が他のとこでどうなるかってのを把握してるので、初めてのところでもその基準を元に作業に自信が持てるってことだ。

どんなにベテランでも、初めての部屋で初めて使うスピーカーで作業するのはかなり厳しいと思う。だから、今度はリファレンス音源ってのが出て来る。聞き慣れてる音源がどう聴こえるかで、その環境の癖を図ってるってわけだね。

最近はずっとモニターはGenelecの83417360やってて、そのデータをクラウド系に上げて、移動時にiPhoneで聴いて気になる部分を直す感じ。ヘッドフォンはFocalの高いの前のやつと最近買ったOLLO S4X。これはレギュラーになる可能性大です。周りのクリエイターにも勧めててみんな半信半疑からの後日大絶賛よね(笑)

Phononも昔から好きで未だに初代SMB-01(現行も使ってます)が好き。今のところこんな感じなんだけど、スタジオに持っていっても違和感がほぼ無いから、後はクライアントの多種多様なこのみ合わせて調整するくらい。それでいつもOKだから、間違えて無いと思う。

モニタースピーカーに関しては、ムジークとかも二回買って手放してるし、ADAMだ、FocalのTwin6とかも持ってたけど、レイアウトとか機材をすぐ変えちゃう俺には今のスピーカーが最適だな。もうぐるっと回ってのこれでいいやって感じ。音だけでいうなら、ADAMの一個前のS2Aが好き。最近廃盤になっちゃったPMCのTWOTWO8とかいいなって思うんだけど高いよね。。

最後に小さな音でミックスや音決めしちゃダメ。 ヘッドフォンでも良いから可能な限りの音量を出したほうがよい。小さい音だとそのスピーカーやヘッドフォンの特性が出なくて、音量で周波数特性がかなり変わっちゃうから、常に同じ音量ってのも基準の重要要素です。

後半に続きます。



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

ABOUT US
akeru
いつの間にやら業界歴20年越えのクリエイターが表じゃ書けないDAW関連レビューやMixテクニックなど書いていきます。 キャリアの中で身につけた経験を元に誰でも独学でプロレベルでミックスやアレンジができる様になれるよ!って記事を心がけてます。 最初は友人のバンドのお手伝いで始めたレコーディングから、アレンジ力が評価されプロデューサーという仕事に到達。その後、様々なバンドやシンガーさんの作曲からレコーディング、ミックスまでをまとめてうける用になって早20年近く。激しめのバンドものからR&B、HipHopを幅広く受けてます。 以前はアウトボードマニアでしたが、いつの間にやらIn The Boxの極みを目指してます。つまり「ミックスに関してはプラグインでもいけるよ」ってのが最近のテーマです。