ベースの居場所を作るために周りを調整する
前回はベースの楽曲における立ち位置の話だったから、今回はどうすればそこにうまく居られるかをテーマにしていこう。
ベースの周波数のポイントの1つが、100hzから300hzにあると思う。この帯域は曲者中の曲者でどんな楽器でも存在してて、しかも聴感上分かりやすいから棲み分けが難しく、更に前回書いたように日本の一般的な住環境がかなり邪魔してきます。つまりここの整理がミックスにおける1つのキーポイントです。
ベース自体を触る前にベースのこの帯域と被るものを整理していこう。
今の所、この流れで存在して居るのはドラムトラックだからまずはキックの処理をしよう。
キックはこの帯域はほぼ重要な要素が無いので広いQで、5〜600hzまでざっくり切ってしまおう。キックは100~150hzまでと1Khz以上以外はあんまり要らないかな。ギターでいうドンシャリになる感じがキックのデフォルトの形かも知れない。海外の友人はドンシャリのことをEQカーブの見た目でSmileと言ってます。
次にスネア、スネアのTOPは正に200hz前後に溜まる音があって、太さにも繋がる。ベースの為に少し削りながら、その上の帯域を少し持ち上げるイメージでいい感じ。で、Bottomはキックのカブりが多いのでエグ目にローカットして、スナッピーの音を中心に目立たせる感じのEQで。コンプでよりスナッピー感を強くすると、ゴースト感も上がってグルーヴがよくなる。
ここまで書いたことから少しずれますが、OHのEQに関してはキックとスネアの音が薄くなるまでローカットでOK。OHが拾った音で使いたいのはシンバルとタムと位置やキット感なので、ここではキックやスネアの音がちょっと邪魔かな。なんでかって言うとマイクからの距離が遠いから再生のタイミングも違うし、混ざるとボヤけすいんだよね、ルーム感だアンビ感だはそれ用のマイクで作れるから、個人的にTOPには求めてないです。
次にギターとの兼ね合いなんだけど、経験上ギターのパームミュートとかでグンっ!って来る低音感って、ギターやアンプの種類、プレイヤーの技量でもちろん違うんだけどが、120~250hzら辺にいる。ここはそれより下をベースに任せて、がっつり被るところはギターよりに配分してみると、上手く収まることが多い。どのみちギターはPANがどセンターのことも無いと思うから、PANで逃げながらもこの帯域はギターを贔屓したいところです。
同じセンターにいるボーカルに対してベースのイメージはボーカルが頭だとすると、お腹から首って感じに縦を意識してちゃんとボーカルを支えるところまで音が存在するように意識するといいと思います。ベースって下から中域までとその後のエッジは意識されてるんだけど、意外とここって意識がないかもしれないですが前述のピッチの問題とかもあって俺はこんな風に音を作ってます。
音域のカブりはあんまり気にならないけど、被る感じがするなら前に書いたマルチバンド&サイドチェーンで時間軸で逃げるか、自称お家芸のインサートリバーブでボーカルよりも気持ち後ろに立ってるようにすればいいかな。インサートリバーブってよく使う小技なのですが、音のを後ろにしたいトラックにインサートでリバーブを挿し、Dry/WetのmixをWet0から上げていくと音が後ろにさがるって技です。10〜20%上げただけでも後ろに下がります。これが聞き取れない環境だと立体的なミックスは困難なので、モニター環境の改善は必須かもしれません。誰でも聞こえないことはできないので、伸び悩むのは腕ではなく環境のせいって人が多いかもしれません。
実際の処理に入っていきます。今回はエレベ編。まずはDIの意義。
さて、ここまででざっくり住み分けを書いてきたので、実際のベース自体の音の処理についてに行こうと思いますがベースっていう音の守備範囲が広すぎて、まずエレベなのか、シンベなのか、エレベならアンプなのかDIなのか、ベース音源なのかで全部変わってくる。一度に書くとかなり長くなるので今回はエレベ中心にまとめます。
まず、実際のレコーディングしたベースに関して把握できれば、ソフトシンセの場合でも応用は聞くと思う。ただ同じ処理をすると大抵失敗しやすい。前にも書いた気もするけど、雑誌やmixテクニック本の類の値を鵜呑みにしない方が良い。むしろ一切数字は無視していいと思う。俺の数字も目安程度に自分で探して見ればよくて、経験上似たような感じなるってだけね。つまりやり方とその意味を身につければ、自分でいくらでもセッティングが作れるし、その次のタイミングで来たデータに対しての経験則で作業スピードがあがるからね。仕事早い人はそんだけの量を経験してるんじゃないかな。
出来れば、アンプ録りのときでもベースはDIを使おう。自分が録りの時はギターでも100%ラインの音は押さえます。その理由としてまずは音。特に低音の厚みが全然違います。インターフェイス直結の人は試しにDIを通してみてください。どれだけ低音の情報感が欠損してたか体感できると思います。い同じことをしてるはずなのにここまで音質に影響がでるならもはやDIを使わないという選択肢は無くなると思います。
二つ目の理由は、DIの音とアンプの音は役割が違うからなんだね。
DIの音は所謂ラインの音=竿自体の音。
直ぐ思いつく用途はReampの為の保険だよね。それ以上が書けないと、俺の筆記試験だと50点。実はハッキリとした低音やベースラインの動いてる感じが見えるのは、DIの音なんだよね。
イメージ&体感上、アンプの方が低音出てそうでしょ?勿論出てるんだけど、EQで切る余分な低音が多くて、MIXで言う中の使える低音ではない。
逆にアンプの音は、歪感や膨よかさとか、エッジ感とか、人間で言うと外見のイメージ。DIが本人で、アンプが外見(服装、髪型)で、スタイルがいい人が、何来てもオシャレな感じなって、本人が垢抜けてないと人気ブランドが余計にダサく見えるのに近い(のか?)この流れで行くと、Reampは一旦家に帰って着替える感じだね。
こんな訳で可能な限りDIでラインは押さえた方がメリットが多い。最近の個人的な定番はギターならUmbrella CompanyのSIGNALFORM ORGANIZER一択。音は地味だけど、どのDIやReampよりダイナミックが正確に残ってる気がしまてます。で、ベースとシンセ類はPueblo AudioのOLLAです。初めてDIでギターを録音してから、DIマニアのようにいろんな機種に手を出してきましたが、今はこの2機種に落ち着いてます。
実際にこうやって処理してみてください。
さて、DIの音の処理に行こう。
ギターでもアコギでもそうだけど、クリーントーンの方が難しいよね。それはダイナミクスが大きいから、プレイヤーの技量が低いとそのバラ付きが目立つ。歪みはコンプの一種なので、そこがない分誤魔化しが効くからそんなに気にならない。
つまりDIの音もクリーンと同様なので音量の変化が大きいから、それに対する対応が必要。そうなるとEQとCOMPってなるんだけど、ここはFabfilterのPro-MBとかWAVESのC4 とかのマルチバンドコンプが最適です。
特定の音階を弾いた時やフレーズ上太い弦に降りた時にメーター(波形)は大きくなりクリップしやすいのでマルチバンドでそこだけを狙って潰すってこと。ここを基準に普通のコンプで処理をしようとするとかなりの圧縮が伴いデメリットが多いです。まずたまに出てくるピークを確実にコントロールしてから、通常のコンプ作業にはいると上手くいきやすいと思います。
アンプの音は、余計なローをカットした後は、DIの音を芯に覆う様な音を作るイメージで行こう。DIの音の高域をブーストしてもとあんまり音楽的なエッジにならないから、アンプの方の歪みとかで作るとエッジが作りやすい。DIしか録ってないなら、DIのトラックからプリセンドでAMPのトラックを作ってそこでシミュレーターでも掛ければ同じ感じ。もちろんその時にのアンシュミの設定はAMP100%だね。ここまで読んでる人なら言うまでもないよね(笑)
そうでもない方はこちらから「余談コラムVol.4:プリとポストの使い分けとパラレルのテクニック」
その後にそれらのトラックを1つのBUSにまとめて、軽くコンプを掛けてくっつけよう。この辺はドラムの時と一緒。
ついでに書くと、A==やPeripheryくらいベースをブリブリに歪ませたい時は、原音を歪ませると低音感や輪郭がなくなるからプリセンドで歪み専用のトラックを作って混ぜるの方が正解。人気あるベースの歪みエフェクトがドライを混ぜれる理由も同じって訳だよね。
最後にまとめると、低音ががっつりくる曲って他の曲よりも個々のパートの低音が多いんじゃなくて楽器の縦が綺麗に揃ってる。それぞれの楽器の必要な帯域を綺麗に同じタイミングで出すことでああいう音圧が有る音になります。なので、キックやベース単体の低音だけで考えない方が良くて、個別トラックへの無駄な低音の付加は、余計に低音が聴こえなくなるってのがポイントです。
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