結局倍音って何?理解するのではなく意識するだけでOK
いろんなプラグインをなんとなく使ってた人が必要に合わせて自分でコントロールできる様になるEQシリーズの④です。
いろんなところでよく出てきますよね「倍音」って言葉。
魔法の様な扱い方をされてるけど、ふわっとしか意味わからなくて大丈夫です。僕もちゃんとは説明できません。
なので、音には基音があってそれの倍の周波数に居る音が〜奇数と偶数が〜的な基本と理論は例のごとく飛ばします(笑)誰かそう言ったことを詳しく書いてる人にお任せして、実用的に関係あるところを中心に触れていきます。
分かりやすい例をあげると、アコースティックギターをはじめとする生楽器は単体で弾いてても寂しくないですよね。逆にエレキギターの生音はそれだけでは寂しく、テンションも上がらなくないですか?
エレキとアコギの弾いてる時の生音の気持ちよさ差がが「倍音が豊か」って言葉に近い(かなり大分雑ですが)感覚かも知れません。
アコーステック楽器を触っている時の方が曲のアイディアをとかが浮かびやすいのもここがポイントで、響きと倍音が空間を埋めてくれるので、集中しやすいんですよね。僕はメロディを書く時にアコギかエレピを触ることが多いです。
例えば、KICKが抜けてこない時、低音を膨らますのではなく、倍音の位置である2~4khzを軽くブーストした方が良い結果になることが多いです。正にこれをやっているのがSonnoxのinflatorとかWavesのVitaminとかです。倍音をいじると音量ではなく存在感が増すので、ボリュームが上がった様に聞こえます。
実際に倍音にアプローチしてみよう!
では、倍音をどうやって豊かにするかというと以下のパターンが考えられます。
- ⑴EQで倍音をブーストする
- ⑵歪ませる
UAD-2のプラグインが人気があるのは、自分で意識をしなくてもこのふたつが同時に行われているかもしません。まあ、個人的にはUAD-2的な濃い味はラッシュは胃がモタれる年齢なのできっぱりと「卒業」してます。荷物も出費も増えるしね(笑)
⑴「EQで倍音をブーストする」
まずは「EQで倍音をブースト」する場合ですが、ここでオススメなのがWavesのSSL Colection(同じシリーズのAPIも使いやすいですね)とか後述のbx_consoleシリーズです。Fabfilter Pro-Q3みたいなクリーン系でもできるのですが、数学的に上がり方をして、意図しない音楽的な付随の仕方をしないので、ビンテージモデリング系の方が分かりやすく楽しいと思います。
これらのプラグインの共通する特徴は、極端なブーストをしても破綻しにくいので、アウトボードの感覚に近く操作出来ます。インプットレベルとアウトプットレベルの設定や簡単なダイナミクス調整も出来るので、個人的な好みではEQ単体のモデルではなく、チャンネルストリップの方がイメージに近づきやすいですね。これで思いっきりグリグリします。グリグリを繰り返しているうちに、それぞれの楽器や声のポイントが分かってくると思います。
⑵歪ませる
次に⑵「歪ませる」のイメージは、ギターエフェクターでお馴染みのオーバドライブとかクリーンブースターの様なもので、しっかり歪ませるというよりは軽く歪むことで倍音を複雑にさせて豊かにすると言った感じです。
いろいろな種類があるのですが、それぞれの特徴をざっくり理解していると狙いたい効果を出しやすいです。
簡単なイメージだと、
- 真空管系→二次倍音、偶数倍音ともいいますが、高周波が増えることで痛くない感じに高域に向かって存在感が伸びる感じです。高域を出したいがキンキンさせたくない時とかに効果的です。
- テープ系→三次倍音、奇数倍音ともいいますが、ローミッドが引き締まり、低音感が増します。アナログテープの特性上広域がなだらかに落ちているので、うるさい音を少し大人しくする効果もあり、独特のコンプ感も音圧に素敵な影響をあたえてくれます。
- トランス系→種類にもよりますが、基本的には重心が下がる様に低音感が増えます。テープほど高域に影響があるわけでもなく、いい意味でちょっと音がなまると言うか粘ります。
他にもアウトボード特有の歪やコンソール特有の歪みなどもありますが、基本的にはこれらの複合だと思っていても大丈夫です。
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ここの波線の間は(〜2018頃)に書いた頃なので、飛ばしてもOKです。まあ、同じ様なことを当時のプラグインで行ってる内容です。
いろいろ試した結果、シンプルかつオススメなのがSteven Slate Digital VCC(WAVESのNLSでも可)とDUYのDaD Tape&DaD Tape(古いですがどうしても好きなんですよね~。最近は仕様頻度が減りましたが)の合わせ技です。
イメージはテープ時代!Tapeで録った音をアナログコンソールに並べるをバーチャルするワケです。宅録の常套手段ラインRec&ソフトシンセには大分効果あります。
例えばこんな感じ。
DaD Tape(シンバルとかの金物は音によってDaD Tape)→VCC(SSL or Neve)→Waves SSL Channel(内蔵コンプは使ってもかなり薄く)→音に合わせたコンプRen comp or CLA 76(ギターはLA-3A,BassはLA-2Aとか)→必要有れば微調整様EQ(Qシリーズ、Pro-Q)
まあ、ここまでやらなくてもほぼほぼ対応出来ますけど、元音がちゃんとしていないデータが来たら1回リセットの意も込めて。
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コンソール系やテープ系プラグインを使うときのポイント!
前述の脱UAD-2の理由の一つはPlugin Allianceのコンソールシリーズ(bx_console SSL 4000 Gとか)がかなり良くて、それを中心で作業したくなりまして。
SoftubeのCONSOLE1も音も使い勝手もすごく良いんだけど、エミュレート元が同じチャンネルなんで、実際の卓の様にチャンネルごとの個体差が巻き起こすアナログならではの陰影が付かないんですよね。bx_console シリーズって72chまで別の筐体のモデリングだから、同じ特性のがなくてそれが絶妙に好きなのです。
年齢的にコンソール世代では無いんだけど、アナログ卓ってボリュームが下がるともにハイ落ちというか存在感が薄くなる感じがあって、DAWのフェーダーって、ただ音量下がるだけでしょ?この重要な要素が昔から悩みで、ここに来て解決方向にむかってくれました。
アナログの卓ってフェーダーの位置での音の変化具合を利用して陰影をつけれたりしたんですよね。これを体験して初めて、いろんなレジェンド等がアナログコンソールを愛し続けてて、ボリュームとパンでバランスをなんたらかんたら〜って意味がようやく分かると思います。
アナログ卓なんて触ることないだろうし、DAWの内臓ミキサーでいくらやっててもこの現象が起きてないから分かりづらいよね。ここも知ってるか知ってないかで大きく違います。だから、コンソールエミュレート系のプラグインが好きだっていうプロの大人が多いってことなんだろうなと思ってます。
TAPE系を挿しまくる人いると思うんだけど、経験上インサートスロットの最初に持ってきたほうがいいです。そこで根本的な変化をさせてからEQだCOMPだに入る感じです。
少し前の現実の世界のとおり、録音したテープを再生して、それをミキサーに並べて音を整理始めるので、その通りの方が筋が通ってる気がします。まあ、プラグインなんで、どこでもいっちゃいいですが。テープ系のプラグインのコツはプリセットをよくみて、そこに書いてある数字に合う様にインプットレベル等を合わせうとこととテープ速度(=ips)をちゃんと理解するだけでいいと思います。ipsの数字が少ない方が低音が増え、数字が高い方が解像度とレンジがあると覚えてといて、変更して好きな方で最初はいいかと思います。
個人的なTape系のお薦めはIK MultimediaのT-RackS Tape Machine Collectionです。この辺のコンソールやテープ系を一括でやりたい場合のお薦めはダントツOVERLOUDのTAPEDESKです。軽いし音いいし何よりもわかりやすいですね。
後、歪み系はプリセンドで別のトラックに送ってそっちで掛けて原音トラックに混ぜるのがコツです。最近のギターエフェクターとかもよくあるでしょ?WET/DRYみたいなつまみ。元のトラックだけでやると原音ごと歪むから音痩せするのよね。ドライに対して、歪み美味しい部分のみを足すと立体感もでます。歪みトラックの方は必要のない要素をEQでカットするのもポイントです。
冒頭のKICKの例だと、歪むことでとんがったアタックの以外のところをざっくりカットして混ぜると、そのカスカスの歪の部分がいい感じのエッジになって足されます。
この部分は「コラムVol.4:立体感が生まれるプリとポストの使い分けとパラレルのテクニック」にて詳しくご紹介してますので、チェックしてください!
いろんなタイミングで「歪み」にアプローチしていこう!
個別トラックでの音作りの後は、各楽器グループごとのBusで質感&音量調整にVertigo/VC-2とかSSL G-Compとかの素敵BusComp系で整え、サブマスタートラックにてステレオ感やミッド&サイドのバランス調整にWaves Centerやbx_saturator V2などなどいろいろなタイミングでやりたいことに合わせて歪みを駆使していきます。
特にbx_saturator V2は、M/Sで歪ませることが出来るので、混みまくっているセンターに影響を与えずにギターの壁やシンセのサイドだけの存在感などを調整出来るのでお薦めですね。同じことができるプラグインも増えてきましたが、なんか慣れでbx_saturator V2に戻ります。個人的に感覚よりもう少し狙っていきやすいです。最近はProcess AudioのSugarというプラグインを実験的に使ってたりもします。
最後にこのサブマスタートラックを作ることを絶対にオススメします。
そこでミックスバランスを一旦完成させ、マスタートラックは音圧とかレベルを提出先(クライアントには派手目、配信はラウドネスをチェック、マスタリングには仮マスターイメージと元データとか)に合わしたものを書き出す用の事務的なトラックとして使ってます。
次回はいいことだらけに見える「倍音」にも実はかなり気をつけなければいけないポイントがあるので、そこに言及して行こうと思います。
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