即戦力のEQテクニックEQ⑦ EQ処理で忘れがちな基本概念をおさらい。

よくある「ここをこうするといいよ」ではないのが今回のポイント!

いろんなプラグインをなんとなく使ってた人が必要に合わせて自分でコントロールできる様になるEQシリーズの⑦です

今回はEQ編の追記です。「即戦力のEQテクニック①〜⑥」で書いてることが普段の作業内容のほとんどな気もしますが、もっと根本的なことをちゃんと書いてないこと(触れてはいたかな)に気づきまして、先に答えから言うと「EQはカットベースを先にした方がいいよ」ということです。

ただよくあるここをカットするといいよとかではないのが今回のポイントです。

例えばキックのトラックを処理しようとすると、大まかにはこんな感じになるかと思います。

  • 20〜30hzより下をローカットするかしないか?カットした方が低音の輪郭でることもあります。
  • 30〜70hzくらいに重心のわかりやすいポイントがあるのでその辺をブースト。
  • 200〜350hzあたりのキックの音としては聞こえづらく他の音をマスキングしやすいあたりをカット
  • 2k,4k,8kと言ったキックのアタックの強調しやすい倍音のあたりを探してブースト

まあもっといろいろポイントはありますが、ミドルを削ってローハイをブーストするので、GUI的にはアルファベットの「M」に近い形になる様なことが多くなります。

これに関しては特に言うこともないのですが、この「M」をどうするかでその先の作業のスムーズさが違ってくるので、時間がある時にでも試してみてください。

自分に合わなかったら忘れてもらっても大丈夫です。いつも通り数字や方法を押し付ける気はないので、なんでも鵜呑みにしない感じの方がお互い楽だと思います(笑)



上か下か?EQの後のコンプで苦戦する人はここがポイントです。

要確認!Mの形が+-0dbより上か下かは大問題!

大体のEQは真ん中に+-0dbがあって、それを基準にブーストとカットをしていく様なGUIだと思います。

ここで再確認して欲しいのが「ブーストはボリュームが上がる」ということです。

このボリュームが上がると言うことは、その次のプラグインやミキサー上でクリップする可能性が増えます。

改めて意識すると当たりまえのことなのですが、EQ処理の場合に意外とこの事を忘れてて音質調整の方ばかりに目が行きがちです。

その結果、レベルコントロールを次に使うコンプやリミッターで行うが思う様に上手くいかずに四苦八苦することありませんか?特にミックスの終盤でレベルコントロールがシビアな時は余計に作業の手数が増えてしまいます。オートメーションやBUSとか絡んでくると余計にしんどくなります。

と言うことで、提案したいのが「+-0db」の下で同じ形になる様にカットしていく方法です。

絵的にはMの山頂が0dbに当たってる感じです。

念の為ですが別に無理やり全帯域を0dbより下にしろって話ではないです。実にシンプルですがこれだけで後のレベルコントロールをあまり気にせずに音質の調整がしやすくなります。

ちなみにEQにアウトプットのノブがついてる理由は同じ様なことだと思います。

個人的に最近よく使うHeritage Audio Motorcity Equalizerとかわかりやすい構造のハードですね。好きなだけブーストして、最後に一番右のGainで下げる感じ。プラグインでもハードでも意識するところは同じですね。

COMPはGRの分に対してMake up Gain をあげるのは浸透してますが、EQもブーストした分プラグインの中で出力を下げる(=もしくはカット中心に作業する)ってはあまり気にされてないなと感じることがあったので書いてみました。どこかしらの帯域を6dbとかブーストしてるならその分にプラグインのアウトプットを適切に下げることを忘れずに。

そもそもアウトプットが無いEQはこの観点からあまり良い製品ではないと思っています。

過去にブーストのポイントとか話してますが、もちろんあげた分今回の様なレベルの調整してます。ほぼ無意識にやってることなので、ここをうまく書いてこなかったなと。

木彫りの熊を思い出してみると、何か見えてきます(笑)

このカットを中心のEQをお薦めするもう一つの理由としては、邪魔な部分を削っていくと自ずと本来の必要な部分が目立ってくるからです。

かなり雑な例えですが「木彫りの人形みたいな感じ」です。

「丸太を削り込んで形を作るのか?」

「丸太に部品をつけて同じ形を作るか?」

という2つの制作方法があるとします。で、出来上がった製品が「その筐体の重さや大きさ=トラックの音量」、「設置場所の対荷重や広さ=マスタートラックの音量」だとすると、前者の方が圧倒的に有利ですよね。上手くいけば複数個並べておくことが出来ます。

最後にまとめると、COMPと同様に EQの作業もバイパス時との処理後の音量を揃えることが必須なので、レベルが大きくずれる様なEQの設定はぐしゃぐしゃミックスへのスタートになります。

まあ同じ結果になりつつレベルが維持されるならその方が楽じゃない?って話です。

近いうちに「リバーブの棲み分けとあえての複数混在」「格好つけすぎないミックス」みたいなテーマで書こうかな思ってます。現時点で下書きが10個以上あるので隙間をみてがんばります!



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akeru
いつの間にやら業界歴20年越えのクリエイターが表じゃ書けないDAW関連レビューやMixテクニックなど書いていきます。 キャリアの中で身につけた経験を元に誰でも独学でプロレベルでミックスやアレンジができる様になれるよ!って記事を心がけてます。 最初は友人のバンドのお手伝いで始めたレコーディングから、アレンジ力が評価されプロデューサーという仕事に到達。その後、様々なバンドやシンガーさんの作曲からレコーディング、ミックスまでをまとめてうける用になって早20年近く。激しめのバンドものからR&B、HipHopを幅広く受けてます。 以前はアウトボードマニアでしたが、いつの間にやらIn The Boxの極みを目指してます。つまり「ミックスに関してはプラグインでもいけるよ」ってのが最近のテーマです。