オートメーションってのにも色々あるもんで、、
以前のブログにコメントにあったオートメーションについてなんですが、逆にみんな何に使ってるかの方が気になってます。
どっかのエンジニアの「オートメーションを描きまくる」みたいのを読んだのかな?
俺も製品レビューによく出てくるエンジニアが「コンプでしっかり潰して、オートメーションで全ての抑揚を自分で書きなおす」みたいなの読んだことあるけど、、、
まあ有り得ないと思う。異論反論あると思いますが、俺はそういうエンジニアが偉いと思ってるタイプを毛嫌いします(苦笑)
エンジニアがブラックボックス間あった20年前ならまだしも、昨今のクリエイターやプレイヤーもしっかりと知識があるので嫌われそうよね。プレイヤーのダイナミクスを可能な限り維持したままレベルのコンロールを完璧にこなすのが、大前提だと思ってます。
まあ、人の事はさておきミックスにおけるオートメーションって何個かに分類できるかなと。
大まかに以下の3つに分けてみました。
- 瞬間的な処理のためのオートメーション
- 回復魔法のようなオートメーション
- ストーリーを作るオートメーション
①瞬間的な処理のためのオートメーション
まずは誰でもやる分かりやすいオートメーションは、エフェクトのバイパスとかフェードイン、フェードアウトとかかな。
フェード系は置いておいて、エフェクトから行こう。その瞬間にしか書けないラジオボイスとかそういうのは、もはや波形にかけるか別トラックにしよう。同じトラックでやるにはデメリットが多いです。コンプのパラメーターもオートメーションで変えるってのも最早かかり過ぎるとこの波形のボリューム触るか、別トラックにした方がいいので、ちょっと古い気がします。
ここを一旦まとめると、1つの音を作るのに必ず1つのトラックでやる必要がないってこと。
平歌とサビが同じ設定である必要も無ければ、一つの設定が頭から終わりまでベストとも言えないので、必要に応じてトラックを切り分けることは悪じゃないです。中級者が落ち入りガチな「トラックやプラグイン数が少ない方がミックスがうまいとか」変なかっこつけとかどうでもいい(笑)理想を目指すのに過程は重要ではなく結果のみの世界ですしね。僕も変なとんがり時期あったもんです。
さて、この点を少しだけ掘ると、なかなかいい感じに作れないってよく聞くキックがいい例で、レコーディングで録った音のみをいじってると昨今の気持ちいいキックはなかなか作れないってことにも繋がりまして、ちゃんとやってるクリエイターの人はいろんな音を混ぜてたり、補強するプラグインなりで一つの音を作ったりしてるでしょ?
ミックスもそうで、なりたい音に必要な要素を揃えるにはトラックが分かれてていいと思います。素の音をデュプリケートして、そのトラックを思いっきり歪ませて、低音削って混ぜる方が、元のトラックを直接いじるよりすぐにアタックが目立ってくる。低音を出そうとEQとかエンハンサー系でやるより、キックのタイミングで低めのサイン波が鳴るようにした方が簡単に出来るとか。この低音の方はちょっと古い技なので、今ならプリセンドでサンプルを混ぜるかな。
まあ、言いたい事は伝わったとしよう。
昔からいてかつ今も人気があるエンジニアさんはこういう技をめちゃくちゃ持ってるんだよね。次から次にプラグインを買ったりする前に工夫でクリアしてるから、一般人より最新のプラグインとかに疎いのかもしれない。
②回復魔法のようなオートメーション
次に最初に否定したトラックにめっちゃ書き込む系ね。これかなりしんどいよね。自分が録りからやるならほぼやらない。というか、生ならやらないでいいようにしか録らない。
そんな俺でも嫌々でもしっかり書くのは、録りが下手な歌と弦とか管の生楽器系のソフトシンセに対するオートメーションです。この二つは音の変化に対して実際のダイナミクスが死んでることが多いから、なんとか生き返らすためのオートメーションが必要です。
これをどうにかするには、頭ん中にある本物の音の記憶と演奏の動きを想像しながら書きまくります。想像力と忍耐力の産物ですね。こればっかしはやるだけ良くなるから頑張るしかない。
ただ、ソフトシンセのは打ち込む人の技量がすごい出るから時間があるなら元データを触った方が案外楽で、可能な限りmidiデータも貰う様にもしてます。これはギタリストとかの子にドライデータを貰うの同じで、こっちでなんとか出来るからなんだよね。単体で聞くとそこまでだけど混ぜると厚みがでるIKのMiroslav Philharmonik 2とかを足してみたり、打ち込みのタイミングやエクスプレッションを追加したりとか、まあ小技がいろいろあるわけです(笑)
でも、オートメーションで抑揚書き込むのと、コンプによるレベル管理って相反するテーマでもありまして。というのも、ボリュームのオートメーションはインサートの後のフェーダーだから、COMPで整えたものをまたムニムニ動かすよね。なので、その場合のコンプ類はそのトラックなりをまとめたBUSなりで抑えたほうが、どっちの効果も生きるかな。
VocalRiderみたいな手コンプ系のプラグインも、インサートする順番なりを同じ感覚で気をつけてみてくださいませ。気をつけてないと、多分上の方にガチガチに当たりっぱなしの状態になってると思います(笑)
こういった経緯があって、以前「実際のMixの流れ編 Vol.11:ボーカル編③ 実際の処理を始めてみる」に書いたような「まず最初に波形自体をいじって音量とか整えたほうがいいな」っていうことに自然と繋がりました。
プレイに関しては、レコーディングの時点でかなり詰めるから、ミックスではなるべく直さないです。全体で聞いて違和感なければ、ほぼ触らないかな。
ここが神経質すぎると、なんかトータルで音も細いし苦労のわりにつまんないんだよね。触っても頭ズレと音の切れ際の揃えくらい。この作業は自己満が多いから、自分の作業は「音楽」ってことを思い出そう。
これが一番大事!ストーリーを作るオートメーション
3つ目は、曲の流れの中でその瞬間に聞こえて欲しい音にプライオリティを付けてちゃんと整理するオートメーションです。プロのインタビューとかのむっちゃ書き込むはここですね。先の2つではないと思います。
ここが勝負どころだとも思ってるくらいこのオートメーションはめっちゃ書きます。
常に頭の中で映像(演奏してる感じとか)を想像しながら、何回も聞き直してとことん詰めます。大げさに言えばもはや自分もそこのメンバーの気分くらい。バンドマン出身なので、その辺の「この後行くよ!」みたいな演奏者の心理的な動きみたい感覚は持ってるつもりです(笑)
で、もういいかなってなって来たら一旦他人の判断に任せます。
この頃になると同じもの聞きすぎて自分では気付かない事が出てくるんだよね。ウチは嫁のが元々業界の人なので、聞いてもらって言われた事を素直に直してみると丁度いいことになる事も多いです。
クライアントやリスナーの感覚ってのがなによりも大事なので、ある程度で意見を聞くってのも立派なテクニックだと思います。自分が好んで聞くジャンルではないときは特にそのジャンルならではの感覚って、エンジニアよりもクリエイターサイドの方が確実にあるからね。
akeruさん、いつも楽しくブログを読ませていただいております。書かれている内容を意識してから、自分自身の成長を実感しています。
2点質問があります。この記事の「ストーリーを作るオートメーション」についてなのですが、主にいじるのはどのオートメーションなのでしょうか。また、サイドチェインを使ってあるパートを目立たせようとするのと、オートメーションで目立たせようとするのと、どちらを使うべきかの判断基準も教えて頂きたいです。よろしくお願い致します。
いつもありがとうございます。コメント頂く少し前から最近までリリースとツアー前のアレンジ系が大量にあって、返信する余裕がありませんでした。。
ということで、「ストーリーを作るオートメーション」という言葉通り、曲によって描きたいストーリーが違うので一概にこれっていうのも難しいのですが、よくやるのはこんな感じでしょうか?
例えば、メジャー系でサビで開放が欲しい時。
・リバーブの種類を切り替えたり、設定を変える
・サビまで全体にほんのりハイカットぽいことをして、サビで外す。
・ハモリの音量バランスを変える
・パンの位置をだんだん開く
などなど。
アレンジ的だと
・Aメロ1よりAメロ2の方が楽器隊のボリュームが上がってたり、最後までに緩くボリュームが上がる様に買いてみる。
・ブレイク後に1拍くらい無音になるのはよくあるので、その1拍にいろんなギミックをいれる。
・瞬間的なLofiや声の飛ばし、ボコーダー的になハモリなど一瞬ネタをもらったデータの素材から作る。
・コラムでも書いた様な「揺れる」音の様な不確実性など、一回聞いて全部わかったらすごいなってくらい細かい処理をして、聞き飽きられない様にもしてます。
ビンテージ系の空間系やモジュレーション系を理解してうまく使える様になると、ツルッとしたミックスに何かしらの引っ掛かりが生まれると思います。
などなど、まず完全に自分が演者側、特にステージに立っているときにメンバーとして想像力を働かせます。
視線の交換で無音で伝える(伝わる)テンションの」上げ下げなどのアレンジまでとは言わない駆け引きやパフォーマンスを意識し、それを再現する様な細かいボリュームを書きまくります。
音量というか熱量を意識してます。レコーディングのタイミングから一緒に作業できるなら、本人のレコーディング風景等もわかるのでいろいろ参考になるし、歌詞の意味をどうにか雰囲気に反映させれないかなとか。
その後に聴く側の視点で聞いて、飽きやすいところとか予定調和になりやすいところを見つけて、それを確実に避ける様な一味をつけたりしたりなどしてます。自分の曲とかミックスって何度も聴くから覚えてるので、よく聞こえてるので、一旦冷静になるのがすごい大事だなと。
後はこのバンド(人)の曲の展開っていっつも一緒じゃないってなると、3枚目くらいで飽きちゃうじゃないですか?そうならないためにジャンル問わず聴きまくって、無意識にネタを溜めれる様にしてます。
お忙しい中ありがとうございます。
アレンジで展開をしっかり作るという意識はあったのですが、MIXでというのは、akeruさんのブログを読んで知った新しい視点でした。
返信いただいた内容を参考にして、また日々聴いている楽曲からもどんどんネタを貯めれるように頑張りたいと思います。
本当にありがとうございました!