オケだけはかっこいいのにボーカル入るとミックスが破綻する人のポイントと解決方法は順番
オケに対するリズム隊とボーカルのボリュームがある程度定まったところで次のステップのボーカルの音像を作り込んで行こうと思います。
この時に邪魔になるのがギターや鍵盤、シンセ系の所謂コード楽器です。こっちを先にやりだすとミックス難民になりやすいので後回しがお薦めです。先にボーカルの場所を確立して、それを避けるながらいかにコード楽器類を格好良く見せるかってのがポイント。オケからボーカルのスペースを掘り起こすんじゃなくて、ボーカルのまわりに綺麗に配置するってことの方が近道ですね。
まあ、オケを先に作り込むって人もいるとおもうけど、ミックスってさオケだけなら結構誰でもいい感じにできるのよね。ここに声っていう主役のでっかい塊がくるから難しいです。
ここは少しかわいくお弁当箱でも想像し見てください。主役はおかずのハンバーグだとしよう(笑)綺麗にいろいろ盛ってからハンバーグを入れるのと、ハンバーグ入れてからまわりの隙間に他のおかずを入れるのどっちが簡単かな。
まあ、ふざけてるようでそんな感じで伝わるかと思います。
ボーカルの音像を広げる3つのポイント
さて今回の本題のボーカルの音像をどう大きくするかを3つの軸で考えよう。
まず横軸を伸ばす。
これは音像が点なのを横伸びた楕円にするイメージね。どうするかって言うと、一番簡単なのはWavesのDoublerやSonnoxのVoxDoubler系ですね。Sonnoxが出るまではWavesを多用してましたが、基本ディレイの類なので、発音タイミングが少し遅れるのですがSonnoxの方が位相感も含め自然なのでコーラスみたいにワザとらしく人数感を増やしたいとき以外はSonnoxのVoxDoublerがメインになってます。
ダブラーって結局何をしているかって言うと実はタダのDelayなんだよね。左16ms、右32msくらいのズレた短いディレイ音をフィードバック1回だけならしてる状態とほぼ一緒。Doublerの場合それぞれのピッチが+-7~9centくらいずれてる感じかな。Doubler系のプラグインを持ってなくても現象を理解すれば、同じ感じになる様に何かで代用できます。これだけで全然ボーカルの大きさが違う。OKテイクじゃないテイクを同じように配置するとよりナチュラルになるけど、タイミングと多少のピッチ合わせが面倒くさいから、プラグインでパパっと。
この時、例の如くインサートではなくて、プリセンド(プリorポストに関しては、こちら「コラムVol.4:プリとポストの使い分けとパラレルのテクニック」)で掛かりすぎてコーラスがかかったみたいにならない手前くらい量をDoublerをインサートしているAUXに送ります。大体のDoublerの設定はデフォルトでセンターがONになってるからそれはバイパスで、初期設定のままでほぼ問題ないです。
次に縦軸を伸ばす。
これはEQで大体男性Voで3~5khzくらい、女性Voで7~9khzを緩めのQでブーストすれだけで結構抜けや存在感が変わるのですが、その後の作業としてプレート系のリバーブを使うともう一段階いけます。
プレートリバーブのプレートってそのまんま鉄板って意味なんですが、本当にそのまま大きな鉄板に音を当てて響かした音なんですよね。なので、まさに金属特有の響きが高音に付きます。これが実音よりも上に大きい響きを足した感じに聞こえる訳だ。
リバーブのコツって、下手にパラメータをさわんないことかもしれない。いじってもプリディレイとタイムくらいでいいです。その先の細かい違いなんて正直あんまりわかんない(笑)イメージに近かづけやすく馴染みやすいなって自分で思うプラグインがあれば、それを使えばよくて、個人的にはValhallaDSPのValhalla PlateかWavesのAbbeyroadあたりが使いやすいかな。毎回同じプリセットを立ち上げて、さっきの2つのパラメーターを触るくらい。気を付けるのは掛かり過ぎないようにオケに合わしてセンド量のオートメーション書こう。前に触れた通り、リバーブの前にSonnoxのSuprEsserやeiosisのE2 Deesserとかディエッサーをインサートしておくと、リバーブのでの歯切音の強調が抑えられます。
先にいうと自分のMIXの時間配分は音作りで6割、4割はバランスをとりながらのオートメーションの書き込みなんだよね。だからオートメーションは後々。
最後は奥行き。そんな言葉はないけど前後軸を伸ばす。
皆さん大好きチョココロネのように奥行きを伸ばすには個人的にはディレイを使います。こうすることでボーカルが前に居たまま後ろに向かって奥行き感がでるので、立体的な音像が作れます。オフにしたときに前に張り付いて聞こえるくらいのさじ加減がコツです。
ディレイ音がこもって歌詞がわからないくらいのハイカットを入れたディレイをプリセンド。ディレイの設定は4分とか8分みたいにハッキリとした位置に音を返さないのがコツで8分の付点か3連とか、完全に耳で合わせた数字でもいいです。フィードバックはブレイクとかで音が止まった瞬間とかがわざとらしくないくらいに耳で決めよう。ここはオートメーションでセンドを切っても良いかと思います。
違った雰囲気を出したい時にはスプリングリバーブやホール系のリバーブを使うこともあります。このテクニック自体はスネアの音像を大きくするのにも利用できるので、試してみてください。
ボーカル編のまとめ
①~④ときて、ボーカル編は一旦終了しますので余談を。
ソフトシンセの進化でアレンジも含めてオケを格好良く作れる人はかなり増えましたが、残念ながら人の記憶に残るのは主軸のボーカルのメロディと歌詞、後はなんとなくのオケのイメージなんですよね。
トラックがカッコいいってのはもちろんあるんですが、その場合はボーカルすらもトラックとして認識して聞くスタイルなので別の話ですね。まあ、洋楽の歌詞は結構がっかりすることが多いのでオケを構成する一つだと思って聞いてる方がいいこともあります(苦笑)
そして、ざっくり曲が気に入ってから初めて細かいとこに意識がいくようになってアレンジも聞いてもらえるので、いかにメインをしっかりと作り込むかが、多少色々できるようになってからの永遠のテーマですね。
海外の新譜とかの新しい音像とか音質で気になるもが出てくるたびに手法を解析して自分のテクニックの一つとして常に精進してます。クリエイターやボーカルさんの方が常に新譜を掘ってるので、彼らのいい意味で無責任(笑)な「こうしたい!」が自分の修行になってると思ってます。
以前にも触れましたが、ボーカルのはアレンジ&処理こそがプロとアマ、プロの中でもトップとその他の境目だと思いますので、これでもかってくらいにこだわってみてください。
昔から「良いメロディーはアコギで歌えるのがベスト」と言われてきてますが、仕事を続ければ続けるほどその言葉の強さが身にしみてます。
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