トラックの音量を固めていく!?
前回の①で余計な低音や高音整理が全部マスタートラックに集まるので、周波数がパンパンに渋滞して必要以上にレベルを稼いでおり、音圧をうまく稼げない元凶という周波数の話を中心にまとめました。今回の内容に関係するので、事前にチェックしてみてください。
自力でOZONEを越え!プロ並みの音圧を稼ぐための下処理の話 ①
今回はもう一つのポイントである「音量」について書いていきます。
今回の音量の下処理というのを具体的に言い換えると、それぞれのトラックの音量を「固めて」後半のバスやマスターに必要以上の音量を送らなくすることです。
もうこれが結論なので、前回の流れから既に理解ができた人もいるかもしれませんが、もう少しお付き合いください。
まずは視点を変えて理解を高めいきましょう!
このブログの中で、何回か-12dbを狙うと後半が楽になると書いてきました。ジャンルによってはもう少し余裕をもってもいいですが、これくらいに揃えていってマスタートラックでパンパンいなってる場合はそこまでのミックスの流れで「処理が仕切れてない」か「意図的にそうしてる」かの2個だと思います。
さて、このトラックレベル-12db近辺にするにはいろんな問題も出てきます。
- 音の迫力がなくなる
- ある一定のタイミングでは飛び出てクリップするd
- 音量を低くすると聞こえない部分が出てくる
などなど。
で、これらの複数の原因を処理するためにコンプレッサー等のダイナミクス系を使います。
「当たり前じゃん」と思うかもしれませんが、本当にこれらの視点を解決するという目的で使ってましたか?なんとなく音量だけ収まるようになればいい感じ処理してたりしてると、先ほどのとおりマスタートラック等は結構ギスギスだと思います。
さて、先ほどの代表的な3つの例に対しそれぞれの対応を感覚ではなく、職人的な対処をしていこうと負います。たまたま昨日のTVで染み抜き職人の特集をやってましたが、シミの種類によって薬剤や方法が違うのに根拠があるのに近いなと思っています。
①音の迫力がなくなる ③にも繋がります。
「音の迫力がなくなる」ということを逆から捉えて、そもそも「迫力がある音とは何か?」を考えてみます。
人それぞれなのですが、俺なりの解釈はこんな感じで、「はっきりした音がある一定以上で安定的に鳴っている」状態です。
一瞬ではただのアクセントなので②の時に話しますが、この一定以上で安定して鳴っているってのが結構難しいんです。
分かり易く難しいのがエレキベースです。なぜかというと、4弦と1弦をように弦の太さがかなり違うので同じ力で弾いた時の物理的に音量が違います。それを上下左右にフレーズが動きます。途中でスラップやピックから指とか奏法が混じったりとさらに大変ですね。ベースを主体に進めていきますが、ボーカルやギター等も同じ感覚で対応できます。
日本の住環境がこのベースラインを特に聞こえづらくするので、ミックスにおいてベースの処理の差が結構でてます。
結局①と③が実はおんなじ作業になるので、合わせて進めて行きます。
この辺を意識してみると結構いい感じになります。
まずは前回にも触れた超低域と高域です。切った方が前に出ることが多いので、オケの中でEQの下拵えを行います。
基本的には演奏者の技量と録音時のコンプレッションがどれだけ上手いかというのが元も子もないのですが、そうじゃない場合は以下の点をチェックしてみてください。ボーカルでも同じ部分に意識してみてください。
・通して聞いてみて聞こえなずらい部分のフレーズを理解する
・同じく通して聞いてみて、あからさまに音量が上がるフレーズを理解する。
大体が演奏方法(歌唱方法やセクション)が変わってると思います。
以前コンプの設定で詳しく書きましたが、まず聞こえずらいフレーズの部分の平均的な音量の一番下の値にスレッショルドを設定します。ボーカルは特に効果的なので、試してみてください。
MIXテクニック基本編COMP④スレッショルドの位置の見極め方のコツ
この一番下の部分は何かしらのコンプ作業の最終的なメイクアップゲインによって、元の音量よりも持ち上がる部分なので(聞こえづらいところを聞こえるところまで持ち上げるためのコンプ)ここを基準にそれより上を潰します。リダクションがどうのRatioがどうのは素材によってしまうので割愛しますがあえてざっくり書くと、
「オケの中で違和感なくずっと聴こえればOK」
つまり、これを目的にオケの中で設定を作っていかないと、なんのためにやってるの感じになってくんですよね。ここで「おっ!」と思った人はもう作業が始めたくなってきたはずです(笑)
この作業を個別のトラックのみで行ってると、音を重ねていった後に修正をすること(作業が難度も前に戻るって感じ)が増え、いつの間にかミックス難民になってしまうと思います。このパターンの人、意外と多いんじゃないかな〜。
で、その中でいかにナチュラルさを出すかが腕の見せ所です。設定、機材、プラグインなどなどいろいろな要因がありますが、目的がわかってればそうなるまで実験をするのみです。
いろんなコンプがありますが、最近でたこれが結構面白いので実験を重ねてます。
SONIBLE SMART:COMP 2 AIが云々よりも、2000バンドの周波数ごとに解析されてるらしく、確かに圧縮具合が音楽的に自然ですね。均一に潰されてない感じがします。
まず最初にこういったクリーン目のコンプで粗熱をとるような感じに上を押さえつけていきます。
今度はこの様な設定にした時にあからさまにコンプが掛かりすぎてしまう瞬間のフレーズを理解します。
弦が太い方に移動したなら、その瞬間だけにかかるようなマルチバンドコンプで狙い撃ちしたり、別のコンプで同じくその瞬間だけにかかるよう設定にするか、波形自体の音量を調整します。これは先ほどのコンプの前で処理をし、先ほどのコンプでそうならない様に事前に整える感じです。これは最近よくやっている音圧とかをゴールの状態にしてから破綻するところを治すミックスパターンと同じ考え方でもあります。
マルチバンドコンプを覚えると様々な面で便利なので、いろいろ実験してみてください。オケに対してボーカルからのサイドチェーンを入れるなど、以前では技術的にできなかった時間軸における周波数の瞬間処理も可能です。
下を決めるコンプ&それに収まるように上を抑えるコンプなど、複数のダイナミクス系を駆使して可能な限り一定の音量でオケの中で聞こえるように固めていきます。冒頭の「固める」とあえて書いた意味はこのような意図があります。なんども書いてますが、一つのトラックや一つのプラグインでやらなきゃいけないというルールなんてありません。あるのは自己満だけです。
②ある一定のタイミングでは飛び出てクリップする
それでも飛び出る瞬間は②のある一定のタイミングでは飛び出てクリップすると同じ方法で抑えてこみます。
もうこれはカッコつけずにリミッターで大丈夫です。
ナチュラルさという美徳も処理できなかったら逆にアウトです。上限を決めるためにリミッターがあるので、こここそ出番です。ただマスタートラック等で使う設定等は違い、シーリング(Ceiling)の値で上限を確定します。これをいつもみたいに0db近辺に持ってくと全くもって意味がないのでその点はご注意を。
Ceilingを-12〜14db近辺にしてしっかりと止め、その後にトラックフェーダーで他との兼ね合いを調整します。この辺はSONNOXのOxford Dynamicsなどが、コンプとリミッターとその他をいっぺんに管理できるので重宝します。
コンプでレベルを整えて、それでも飛び出した部分だけリミットするっていう今回のテーマが理解しやすいコンプですね。もちろん好きなプラグインの組み合わせでも問題ないです。
こういうインパクト系のトラックはWavesの L1やL2といった1世代前の製品の方が独特のざらつきがでてかっこよかったします。スネアとかタムとかはそういった効果を狙って選ぶのもありです。ちなみにLシリーズはThresholdとOut CEILINGのメーターの両方に向かってる◁▷を摘むと同時にThresholdとOut CEILINGが触れるので掛け過ぎの限界値を探れます。小ネタですが。
まとめ
先ほど文中で軽く触れましたが、ダイナミクス系を欲しいだけ掛けてから、破綻する(した)部分をそうならない様に前にマイナスを入れていく方が、従来の演算式で狙った音を作るより簡単かもしれません。
この方式と今回のシリーズを組み合わせると「自力でOZONEを越え!」の部分を狙ったようにコントロールできるようになり「プロ並みの音圧を稼ぐ」は文頭のこういった作業をしっかりと意味を持ってやっていくと、マスタートラックのバランスや余裕が生まれ、自分の好きなプラグインで好きなだけプラスを入れることができてきます。
なんにせよ、気になったことは実際にやってみてくださいませ。気に入ったら使えばいいし、ピンと来なかったら忘れればいいだけです(笑)
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